放課後を知らせるチャイムが鳴る。
帰る準備をし、鞄を手に蘭世は俊の席に向かう。
「真壁く───ん。帰ろ♪ ……って、あれ??」
俊は肩肘をついた姿勢のまま。熟睡モード。
六限、ちらりと斜め後ろを盗み見たとき、すでに俊は寝ていた。
「そっか───、チャイムも気づかないか───。」
割と長いまつげが、静かな、規則正しい寝息にあわせて揺れている。
外のバイトとトレーニングで焼けた肌。自分とは確実に違う色が
夏の日差しを思い出させて好きだった。
「……」
今日はバイトはない日だし、部活もない。
「もうちょっとだけ残ってよっか」
蘭世は鞄から文庫本を取り出し、前の席に座って読み出した。
「……? 江藤?」
いつのまにか読書に没頭していたらしい。外は夕焼け小焼け。
目を覚ました俊に呼びかけられて、蘭世はふと現実に引き戻された。
「あ、おはよ───。ごめんね、わたしも夢中になっちゃった」
文庫本を鞄にしまう蘭世。それを無言でじ───っと見つめている俊。
「……真壁くん??」
蘭世が顔の前で手をひらひらさせると、
はっと気づいたようにやっと口を開いた。
「……あ。悪い、おれ、寝て……。今、何時だ?」
「あ……もちょっとで七時……」
廊下に身を乗り出し、顔だけ出して外をうかがうと、
他の教室は全て電気が消えている。
「みんな帰っちゃったみたいだね。そろそろ帰ろっか??」
と、振り向くと、すぐ目の前に俊が立っていた。
「ひゃあっっ!?」
叫びそうになる口を封じ、そのまま引き寄せ、扉を閉じる。
肩と腰にまわした腕に力がこもる。
「おまえ、またおれの夢に入っただろ」
「え!? やだ、入ってないって……。!!」
下腹部に当たる硬い部分に気づき、それが何なのか思い至って
蘭世は耳まで赤くなった。
寝起きで……これって……それ、よね……。
ぶんぶん。かぶりを振る。
「……そっか。願望か。」「え」
蘭世の返事も聞かず、俊は蘭世を抱えあげた。
電気のスイッチを消し、歩き出す……
蘭世を机に座らせ、俊は制服のブラウスのボタンを
丁寧にはずしていく。
真壁くん……? どうして、こんなとこで……。
家に帰ればいくらでも……って、ちがうううう!!
「ぶふっっ」
蘭世の心を読んでしまい、思わず吹き出す俊。
「いくらでもって……おまえ。」
「きゃ!? 読んだの!?」
ますます紅くなる顔。何でよりによってこんな事
読まれちゃうのよう……
「いや、だから───」
背中から差す光で表情はあまり見えないけど……
真壁くんも顔、紅い……?
「?」
頬を押さえながらまじまじと自分を見つめる相手をあらためて抱きしめ、言った。
「ここからは、おれの夢のつづき。」
二つくっついて並べられた机に倒され、背中を押し付けられる。
優しく受け止めてくれるいつもの布団とは異なり、机は硬く冷たく、背中を突き放す。
俊は立ったまま前かがみで、舌で蘭世の口内を犯していく。
とろけそうな甘美な感覚。
「……ふ」
飲み下せない唾液がひとすじ頬をすべる。
俊はそれを舐めとり、そのまま下へと降りていく。
机のベッドは下手に動くと落ちそうなほど狭い。その不安定さが
逆に俊を駆り立てる。
机の端から垂らした蘭世の足を開いて机をまたがせる格好にし、
指は早々と蘭世への入り口を弄び始めていた。
真壁くんの、指が、熱い……。
臍のあたりにある俊の頭に手をやり、髪をいじりながらぼんやりと蘭世は思った。
俊がふと顔を上げる。なんだか泣きそうな、紅潮した顔。
いつもは暗闇に隠れていて、初めて見た。思わず見入ってしまう。
「……悪い。おれ、とまんねえ、らしい。」
俊は蘭世の脚を自分の腰にかける。
いつもより先を急ごうとする俊の動きに、律儀に応えていく身体。
今それは俊のためだけに存在した。
二人の動きに合わせ、机がガタガタと派手な音を立てて揺れる。
それと同じリズムで蘭世の喘ぎ声。「その時」にいつも自分の名前を叫ぶ
彼女を愛しく思いながら、俊は動きを早めた。
すっかり暗くなってしまった教室で、机を並べ直している
俊に蘭世が尋ねる。
「ね、どんな夢、みたの?」
「〜〜〜〜〜。」
うわ〜〜。真壁くん、紅くなってるよおお♪
何となく優位に立てた気がして嬉しくなる。
「ね───、ね───。」
「うるせえなっっ! ったく……。最近減量にバイトにトレーニングに、そればっかだったからなあ。ちっ。」
「きゃ♪ 飢えたオオカミっ。こわ───い。」
自分の身体を自分で抱きながら震えるポーズをする蘭世。
俊はそれにとりあわず、ネクタイをゆるめに縛り、帰り支度を始める。
蘭世もそれにあわせて席を立つ。
「あ、今日の夕飯、何にしよっか??」
もっといじめていたいけれど後が恐いので話題転換。でも俊は。
「オオカミだから……」
「え?」
二つの鞄を小脇に抱え、くるりと向き直ってにやにや笑いながら言った。
「今夜は寝させねえぞ。」
ぼん!! 何かが破裂したような音が蘭世の頭の中に響いた。