蘭世は俊を探して礼拝堂に来ていた。
聖ポーリア学園はミッションスクール。
煉瓦造りの、生徒全員を収容できるくらいの礼拝堂がある。
週一回の礼拝くらいにしか使っていないそこは、生徒もあまり立ち寄る事もなく、
チャイムも聞こえるので実は授業のエスケープ場所にもってこいの場所だった。
かなりの頻度で俊がここで昼寝をしているのを蘭世は知っている。
また、ちょっとした待ち合わせにも便利なので、
今日のように、日直等で片方が残っている時などよく使わせてもらっている。
「真壁くん……いる??」
礼拝堂の重い扉を閉じ、蘭世は呼びかけてみた。
正面の十字架がかもし出す厳かな雰囲気。
空気までが澄んでいる気がして、蘭世も密かにここがお気に入りだった。
真ん中の通路をてくてく歩く。
前から十列目の長椅子は俊の定位置。
そこから手のひらが覗き、ひらひらと招いている。
「あ。えへへ。ごめんねー。遅くなっちゃって。はい、鞄。」
手には二人分の鞄。俊は六限にはすでに教室から消えていたので、
後から教室をでた蘭世が運んでいた。
「サンキュ」
鞄を両方とも受け取った俊に蘭世は尋ねる。
「もうちょっとだけ、ここにいてもいい?」
「あ、こっちのほうが、陽が当たって気持ちいいよ。」
蘭世が立っているのは生徒が並ぶフロアより階段五段分ほど高くなった所。
一見ステージのようになっていて、いつもはシスターが聖句の話などをする。
俊も鞄を抱え、そこに向かう。
「わたしねえ、けっこう、ここ、好きなんだ―。」
端から足をたらし座り込む二人。
ステンドグラスからもれる夕焼けの日差しが蘭世を照らす。
聖母マリアも裸足で逃げ出すような穏やかで鮮やかな微笑に、俊は一瞬息を飲んだ。
明るく輝く髪をひとすじ指に絡ませ、そのまま唇を重ねる。
ばんっっ。
俊の膝から、かなり派手な音を響かせ鞄が床に落ちる。
「……あ、真壁く……」
「あとで、いい。」
二人の影が一つに重なった。放課を促すチャイムがいつもよりすごく遠くに聞こえる。
「……っ。真壁くんっ。誰、か……来たら……」
「誰も来ねえよ」
俊は蘭世に覆い被さった姿勢で、左手で肘をついて自らの体を支え、
右手で蘭世のスカートのファスナーをはずす。
「つーか、来ても開かないようにしとくけどな。ドア。」
いたずらっぽく笑う。主導権はいつでも彼の方。
「〜〜〜っっ。」
俊は蘭世の耳たぶを舐めながら、蘭世のベストをとり、ネクタイに手をかけた。
するりと、衣擦れの音。
それは静かな堂内にやけに大きく響いて、俊をすこし興奮させる。
「……ふ」
頬を上気させて蘭世が吐息をもらす。
こんな小さな音さえもすごく大きな音に聞こえてしまい、あわてて口を塞いでしまう。
そんな恥じらいがたまらなく愛しくて、俊はブラウスのボタンをわざと荒々しくはずす。
ブラを無理やり引き上げ、露わになったふくらみを掴み、桃色の突起を強めに噛んだ。
そのまま白い肌に無数の紅い印を刻んでいく……
「や……っ。」
いつもと違う激しい愛撫に、体中が震えて応える。
「こ、声が出ちゃ……」
シャツを脱ぎ、肌と肌でお互いの体温を確かめる。
今は背中に立てられた爪の刺激までが心地よい。
十字架が見てる。蘭世は自分たちを見下ろす位置にある十字架から目が離せないでいた。
禁忌を破る時のある種の快感。それも俊の味方をしていた。
身体のラインをなぞる、形のいい指。その動きにいつもより過剰に反応してしまう。
俊の指はすでに蘭世の入り口にたどり着いていた。
円を描き、形をなぞられ、それはショーツの上からでも見て取れるほど、溢れた蜜で濡れている。
「……あ、んまり……見ない……で……」
隠そうとする蘭世の腕も、たやすく動きを封じ、長めの指をショーツの脇から侵入させる。
するりと抵抗なく受け入れられた指を奥まで差し入れ、抜けない程度に引き、再び奥へ。
そのリズムで蘭世はどんどん高みへと押しやられていく。
声を抑えている余裕などとうになくなっている。
それでも自分の指を噛み、声を封じようとする。
その手に長く長く口付け、自分の頬に押し当てて俊は蘭世の耳元で囁く。
「……聞きたい」
吐息まじりのそれが何かのスイッチであったかのように、蘭世を狂わせた。
「は……あっっ! んんっ……。ま……かべく……」
堂内に悲鳴に近い声が響く。火照った頬ですがるように自分を見つめる蘭世。
たまらずショーツを剥ぎ、蘭世自身にむしゃぶりつく。
白く細い足を自分の肩にかけ、腰を抱えあげ固定し、自分が出させた愛液を吸い上げる。
蘭世の身体で触れた事のないところなど、既になくなっているその舌は、
心を読んでいるわけでもないのに蘭世の敏感な箇所を確実に攻め立てた。
「や……あああっっ、だ、だめっっ!ん……っっは、ああああ……」
甘く苦い、独特な香り。俊もだんだんと溺れていく。
「……ふ」
俊は自分の舌から蘭世を解放する。額の汗をわずらわしく拭い、ベルトをはずす。
とろけそうな視線の蘭世の脇に手を差し入れ、子供にするように軽々と持ち上げ、自分をまたぐ格好で座らせる。
俊の肩に腕をまわしてくったりと身を任せるしかできない蘭世。
俊は、すっかりいきり立ち、受け入れてくれる先をずっと待っていた自分自身を蘭世自身にあてがう。
ぴくん、と一瞬全身に震えが走り、腰が浮く。
俊の本能はそれを許さず、腰に添える手に力をこめ、自分の元へ一気に引き下げた。
「…………っっ! あっ……、ああ……っ」
「……、く……」
奥まですっぽりと収まったそれは蘭世の中でさらに自己主張を続ける。
さっきまで攻められる一方だったはずのそこは、思いがけない強さで俊を包み込む。
快楽を貪り腰を突き上げる。深く、浅く。
上下運動ですっかり乱れた蘭世の髪が、汗ばんだ身体に絡みつく。
どんどん熱くなっていく感覚。
「ま、かべく……っ。わ、たし……」
「っ……。え……、とう……」
息も絶え絶えで言葉が続かない。限界に近いのは蘭世だけではない。
目の前で揺れる、実は豊かな胸に頬をうずめ、
しっかりと抱きしめながら堕ちていくのを待つ……。
夕日はすでに姿を隠し、月明かりがステンドグラスから二人の舞台と
十字架を照らしていた。