俊がお手洗いから戻ると蘭世はすでに居眠りを始めていた。

「あー……。まいったな」

さっき飲んでいた玉子酒がまずかったらしい。
作りすぎたのか単純に自分が飲みたかったのか、やけに量があった……気が。
時計はすでに次の日を指していた。
本当はこんなに遅くなる前に送るつもりだったのに……
病気のせいか、心細かったのだろうか。

「もう帰った方がいいぞ」の台詞を告げることができずにこの時間。
テレポートさせとくか。と、力をこめた手を思い直して留める。
きっと目を覚ました時に、異常に気にするに違いないから。
病人に余計な気を遣わせちゃったー!!……とかなんとか。
……ため息。

「親父さんたちには明日謝りに行くか……」

とりあえず抱き上げて布団に運ぶ。
ふわふわ起毛したカーディガンと、タータンチェックのプリーツスカート。
しわになっても申し訳ないので、起こさないよう気をつけながら脱がしていく。
いつもは、服が破れない程度にしか力を加減していないので、
ボタンをはずす動作が何だかぎこちない。
確か、パジャマは洗ってあるものがタンスにしまってあった筈なので、
それに着替えさせればよいのだが……

「……これも一応……はずすんだ……よな?」

シャツのボタンもはずし終え、ふとみると、……もう一つ、
頑丈に蘭世を覆っていた。

……どうしろと?

あたりまえだが、自分の生涯のうちで、一度も使用したことが
ないものなので勝手がわからない。
いつもは寝るときつけてないし……というか、確かに行為のあとは
そのままの姿で寝てしまうか、その辺に転がったパジャマの上着だけ羽織るのが定番だったが、
一人の時はどうしてるのか、なんて聞いたこともない。
形が崩れるから、とか、もしかしたらつけたままで寝ているかもしれないし……
あんがい着やせするタイプの身体をながめながらしばし呆然。
……まあ、一日ぐらいなら深刻な影響はないだろう。……多分。
意を決して、ホックをはずす。

後ろからはずすタイプなので、蘭世を寝かせたまま俊は
覆い被さるように腕を背に回す。
ふわりと、よい香り。
何度となく嗅いだ覚えのある香りのはずが、今日はやけに挑発的に俊を誘う。
風邪のせいか、頭に血の上るスピードも1・5倍。
耐えきれず、肌に唇を這わせてみるが、
蘭世は『すやすや』。そんな擬音がまさにぴったりな寝息を保っている。
無防備な、相手を信じきった寝顔。

「……なにやってんだおれ……」

自分だけが興奮してることがちょっと情けなくなり、
出してきたパジャマを着せる事だけに専念することにした。
細身の蘭世には大きすぎて、自分の身体との違いを改めて知る。
襟の合わせ目から中身が見えなさそうで見えるところが……
見慣れているとはいえやはり目のやり場に困る。

「〜〜〜〜〜っっ」

ぶんぶんと、吹っ切るかのようにかぶりを振り、腕枕に蘭世の頭をのせ
布団を乱暴にかぶった。

「……風邪なんかよりも、精神的にやられるっつうの……」

悶々としながら、浅い眠りに落ちていく……