二人は俊の部屋にいた。会ったのは午後になってからで、
新作のビデオを立て続けに2本見て、夕飯を食べ終えたところ。

「今日は泊まってくるの? なーんて、鈴世がからかうのよ。
やーね最近の小学生。余計なとこだけ進んじゃって。
お母さんも妙に気を遣ってくるし」
「…………」
「真壁くん?」

無言でじっと自分を見る俊。
なんかおかしいこと言ったかしら……。蘭世に緊張感が走る。

「お前、今夜用事は?」
「へ? 別に、ないけど……」

俊は無言で受話器をとり、手渡す。
理解不能な行動に、蘭世は何がなにやらわからない。

「?」

しばらくの沈黙。
冷めてしまった紅茶を一口飲んでようやく俊が口を開く。

「……今夜は一緒にいよう」





それまでの信用を利用するようなことはしたくない。
俊はいつも蘭世を10時までには江藤家へ送っていた。
それが今日は……もうちょっとで明日。
俊はテーブルを端に寄せ、布団を敷き始めている。

「……布団も、枕も、ひとつしかないけど」

促されるままに江藤家に電話を入れ、戻ってきた蘭世を見て、淡々と確認する俊。

「……あ、えと……」

季節は初冬。寝る場所が一つということが何を意味するのか……。
やっぱり、帰った方が……。そういいかけた瞬間。

「……蘭世」

どきん。
生まれた時から慣れ親しんできた自分の名前なのに、
俊が口にするとそれは途端に呪文となって蘭世の鼓動を早めた。

「おいで」

長く、たくましい腕を広げる。
これ以上は不可能だというほど早くなる鼓動。もう、何も考えられない。

「……灯り……消して……?」



闇の中、俊の手が蘭世を求めて手探りで移動する。
頬を探しあて、唇を指でなぞり、唇を重ねる。
全てを知ろうとする俊の舌の動きにあわせ、
蘭世も懸命に舌を絡ませた。
息苦しくなるほど長いキスで、胸の動機が少し落ち着く。

「真壁くんも……初めて?」

少し、目が闇に慣れてきたのか、さっきよりスムーズな動きで
蘭世の服のボタンをひとつずつはずしていく俊の襟足を指に絡めながら蘭世は尋ねた。

「……言いづらいこと、はっきり聞くなよ」

蘭世の顔が曇る。さすがにその表情の変化までは俊も見て取れないが、
黙り込んでしまった相手の心境くらい、心を読まなくても判る。
……でも、今は、わたしを好きでいて……くれるし……
自力で立ち直ろうとするけれど、空回り。涙がでそう。

「ばーか……」

俊は苦笑交じりに、蘭世の前髪をくしゃくしゃにして、囁く。

「……おれも、初めて」



この部屋では初めての、生まれたままの姿。
お互いの体温を確かめ合うようにきつく抱き合う。
耳たぶに俊の髪が軽く触れ、蘭世を優しくくすぐる。

「や……」「え」

寒いわけでもないのに、腕に鳥肌が立つ。初めての感覚。
体中に一瞬電流が走ったような気がした。

「……気持ち、いいのか?」
「!! ち、ちが……あっ」

それがとてもいけないことのようで、慌てて首を振るが、逆効果……
ますます俊の髪がいたずらをしてくる。

「じゃ、もっと、良く……してやる」

俊は蘭世の汚れのない首筋を軽く噛み、軽く吸い自分の跡を残した唇で
体中を彷徨い始めた。形のよいふくらみを小鳥のようについばみ、歯を立ててみる。
吐息を漏らし、身体をそらす蘭世。中央の果実は初めて受ける刺激に耐え切れず
少し大きくなり、立ち上がっている。指でそれを優しく転がしながら舌は谷間へ。
気温は低いのに少し汗ばんでいるそこは独特の味がする。

「熱いのか?」
「ん……っ。そ、んなこと……ない……」

実際、俊の手が、唇が、触れたところからどんどん蘭世を熱くさせていた。

「指先は冷たいみたいだけどな」

不意に蘭世の手をひき、人差し指を咥える。ねっとりと動く舌。
この舌で自分の身体が清められていることを改めて思い出し、頭に血が昇る。

「……は。あん……」

すでに自分のものではないような声に、自分で驚く。
俊の指は蘭世の持つ茂みに降り立って、様子をうかがい
ひっそりと動いていた。最初優しく一定のリズムで撫でていたのが
軽く爪弾き、強く押し上げ……それに翻弄されていく。
押さえきれない喘ぎ声と、それを発しているのが自分だという事実。
羞恥心も共に蘭世を攻め立てる。

突然、光が蘭世を包んだ。

「……あ……??」

部屋の電気が点いていて、蘭世の白い身体を照らす。
闇から突然光に連れ戻されしばらくぼうっとしていたが、はっと我に帰る。

「……っ! やだあ!! で、んきは……」

皺の寄ったシーツをたぐりよせ、自分の細さを隠そうとする。
その両手を掴んで広げる俊。
抵抗できないほど力をこめる。手首が少し、痛い。

「悪い……。でも、すげえ、見たい……」
「や……いやあ……っっ。恥ずかしい……よ……!!」

俊は蘭世の両手首を片手に持ち替え固定する。
あいたもう片方の手は蘭世の脚を開き、内腿を押さえ、
まげて座っている自分の足に蘭世の腰を引き寄せ少し浮かせる。
初めて、全てを見た。透き通るほど白い肌。
ところどころに自分のつけた痕があり、その紅さが妖しく俊を魅了する。

「……こんなに、なってる」

花びらの内側を指でなぞる。たっぷりと溢れた蜜をかきとり、口に含む。

「ひあっっ……!!」

それだけでは飽き足らず舌を這わせた俊。
手首は開放されたけれど抵抗できないのは、体中の力が一瞬にして
抜けたから。いつもより数倍敏感になっている感覚が
心とのバランスを失っていく。
抵抗できないのか、抵抗したくないのか。考える余裕すらなく、
ただシーツを握り締めるしかできない。
同じくらい呼吸を乱し顔を上げ、蘭世を見る。
乱れた髪が汗ばんだ身体に絡み、それが鎖のようで、
俊の征服欲を駆り立てる。



「ああっっ……」

舌で突起を転がしつつ、指を蘭世の中へ侵入させていく。
人差し指をいったん奥まで差し入れ、軽く引き
中指も共に奥へ……。言葉で表すことのできない異物感に、
蘭世自身の防衛本能か、三本の指をぎゅうぎゅうと締め付けてくる。

「……ちょっと、慣らす……から……」

蘭世の熱を感じながら、指の動きを激しくする。
俊もそれだけでおかしくなりそうだ。
猛る自分自身を押さえながら、入り口を少しずつ広げていく。
その動きにワンテンポ遅れて蘭世が喘ぐ。
水っぽい音をたて、一気に指を引き抜く。
がくがくと震える細い腰をしっかりと抱え、今度はゆっくりと自分自身の挿入を試みた。

「あ……ああああっっ!! い……、ったあい……!!」

耐えがたい痛みに蘭世は絶叫する。かたくなに自分を拒むそこに、
俊は本能のまま突き進んでいく。

「やっ! ……んあ……っっ」

奥まで収めてみるが、やはり抵抗は続き、思いのほか強い力で俊を締め付けてくる。
流石に、やばいか……。俊は腰をひこうとする。
と、蘭世が俊の指に指をからめ息もたえだえに囁く。

「……だ、め……。そのまま……、に、して……」
「……無理、すんな……って」

初めての時はとても痛い事くらいは噂で聞いている。
少なくとも自分の快楽のためだけに動くことはしたくなかった。

「……ちが、う……の。つらいけど……真壁く……、を感じられるから、もっと……痛くし……てっ……!」
「……っっ」

蘭世の懇願には答えず、俊は無言で蘭世の腰を引き離す。

「真壁く……」

涙混じりに抗議しようとする蘭世。その唇を唇でふさぎ脚を自分の肩にかけて、ただ、一言。

「覚悟、しろよ」

あとは、快楽を貪るためだけに。