「すてきだったなあ、結婚式……」
今日はアロンとフィラの結婚式。魔界の新しい王と王妃の誕生ということで
ありとあらゆる催しが行われ、華やかな時が過ぎていた。
その祭りから抜け出し、俊と蘭世は今、想いヶ池の淵にたたずんでいる。
「…………」
───やばい。
自分の弟の結婚式を思い出し、まるで自分のことのように純粋に陶酔している相手に、
こんな感情を抱いてしまうなんて。
自分は、かなり邪な人間なのだろうと思ってしまう。
でも、相手なくしては自分も存在できない、と悟ってしまった今では
全てを手に入れたい。それだけが募る想い。
「……いつか……」
いつかって、いつだ? 唇を合わせながら自問自答。
今しかねえだろ真壁俊!!
気合を入れ、俊は蘭世のドレスに手をかけた。
「!!」
一瞬、蘭世の身体がこわばる。
しかし、静かに両腕を俊の背中に回し、ゆっくりと身体を預けてきた。
こんなこと、けして女の子の口からは言えないけれど。
ずっとして欲しかったこと。自分の身体が、愛する俊に愛されていく。
それだけで蘭世はとろけそうだった。
不器用にドレスのファスナーを下ろす手の動きを
遮らないよう、自然に腰のリボンをするりとほどく。
真壁くん、早く……
自分の衣装をいまいましくほどきながら、空いた手では
身体のラインを守っているコルセットの封印を解く。
……???
……解くべく、試みているの、だろうが。
「〜〜〜〜〜」
「……あ、の……。ここ、に、組み紐が、あるから……」
おずおずと、蘭世は俊の手を導く。
「…………。悪い……」
違う意味で耳まで真っ赤になって、王子が囁く。解放された肌から目が離せない。
俊のためだけに磨いてきた身体。見つめられるのはちょっと恥ずかしかったけれど、
壊れるほどの抱擁がそんな感情を押し返す。
「真壁くん……。好き……」
再び唇を合わせる。さっきよりも長く深く。
優しく髪を撫でていた指が、まちきれずに蘭世の入り口に向かう。
絡める舌と遠慮がちに蠢く指のリズムが妙に波長が取れていて
腰がうずいてしまう。思わず回した手に力がこもる。
それを知ってか知らずか、俊は指の動きを早める。
実際のところ、弄んでいるのか耐え切れないのか
自分でも判らなくなってきている。唇はまだ塞いだまま。
「……はっ……あ。」
吐息を漏らし、仰け反る。目の端に野の花が揺れる。
久しぶりに口からの呼吸を試みるが、身体の真中を走る甘い衝撃がそれを許してくれない。
俊の舌が蘭世を狂わせ、乱れた蘭世の赤い頬が俊を誘う。
うっすらと額ににじんだ汗を優しく拭い、軽く口付け
俊は蘭世の足を自分の肩にかけた。
「…………!!」
突然の、えもいわれぬ異物感に、声も出ない。
酸素不足の金魚のように口をぱくぱくさせるしかできず
俊のなすがままに全てを受け止める。
蘭世に包まれ絶頂を迎えた俊は、呼吸を整えながら、
目元に光る涙を静かに吸い取った。
「……まさか外で、とはな」
「ふふふ……」
俊が先ほど脱ぎ散らかした衣装を再び身に纏っていく。
紅いマントにくるまりながら蘭世はじっとそれを見ていた。
「…………ぶっっ」
「何だよっっ」
俊がタイツを履く仕草を見て、思わず吹き出してしまう。
「やっぱり、そうやって履くんだね〜」
「うるせえな! だからやだったんだよお前が見てる前で着替えんの!」
腿の半分ぐらいまでずりあげた格好で俊はそのまま強引にブーツを履こうとする。
「えー。そんなんじゃ駄目だよう。上着のすそから見えちゃうってば〜」
と、蘭世はタイツを後ろから引き上げた。
「うわ!? あーーーだだだだっっ!! ばか!やめろって!!」
「え!? だって……」
「男にはいろいろ事情があるんだよ! 右に寄せるとか左に上げるとか!!」
「〜〜〜Θ※υ▲○!!」
もはや人間の言葉ではない叫び声をあげ、蘭世はマントの中に逃げ込んだ。