玄関のチャイムが連打された。
蘭世はドア越しに相手を覗き込む。
一抹の不安は一瞬で消え、満面の笑みでドアを開け、その人を出迎えた。
「おかえりなさあい♪」
「……ただいま。悪いな、大分飲んじまった」
「え、あ、うん……そう、みたいね……」
かつて知ったる悪友・日野と飲んで帰る。
事前の連絡はもらっていたのだが……。
見た目でわかるほどの泥酔状態。顔が真っ赤。目の焦点もかなりあやしい。
珍しい、というよりここまで酔った俊を見るのは初めてだった。
「へへへへへ……」
「ま、真壁くん!?」
何がおかしいのか、妙に笑顔で玄関に座り込んだ。
「はい、お水」
「ん? へへ、サンキュー」
蘭世が差し出したミネラルウオーターを一気に飲み干す。
ビールのCMのようにごくごくごくと咽が大きく動く。
「ぷは。うめー……」
「やだ、そんなとこに置いたら危ないよ〜」
俊が床に置いた空のグラスを慌てて拾い上げる。
その蘭世をじっと無言で見つめる彼。
「……? 真壁くん? なんかついてる?」
「おまえって、さあ……」
「?」
「……おまえ、ホントいい女だと思うよ。良く気が付くし、いつもおれを立ててくれるし。
顔は……おれはあまり気にはしないんだけど、可愛いし、たまにゾクゾクするし」
と蘭世の頬に手を添える。
「……ま、まままま真壁くん!?」
日ごろ言われ慣れていない単語たちが激しく胸を突き刺し一気に蘭世の頬が赤くなる。
いつもはこんな愛情の安売りはしないのに。
お酒の威力って恐ろしい……。
「ほんっと、おまえが傍にいてくれて、おれは幸せ者だよな。
なのにおれは……おまえに何もしてやれねえよ……」
割と細くて長めの手で顔を隠す。肩が少し震える。
ええええ!? ま、真壁くん、泣いてる─────!!
途端に蘭世の目にもぐぐっと涙が込み上げてくる。
「そ、そんなこと、ないっっ! わたしなんて、いつも真壁くんに守ってもらって、
毎日がこんなに楽しくて……」
「……そ、そうか……?」
鼻をすすりながら蘭世を見返す。
「そうよっっ!! わたしも、真壁くんが大好きなんだから!!」
「く〜〜〜〜! おまえ、やっぱ最高!!」
ばふ。外の冷気を吸い込んだコートで抱き締められる。
酔っているせいなのか、力の加減が……。痛いくらいの抱擁。
……でも、嬉しい♪ 自然に顔が緩んでしまう。
「……あ」
「え?」
不意に俊がポケットから小瓶を取り出す。
「土産。美味そうだから、買ってきた」
「うわあ……」
それは、プレゼント用にラッピングされた蜂蜜。
照明に向って覗き込むと、透き通るような黄金色。
「えへへ。ありがとう……。早速明日の朝食べようねっっ
あ、真壁くんは明日起きられないかな?」
「……そうだな」
無邪気に喜ぶ蘭世の頭を撫でて立ち上がり、千鳥足であらかじめ敷いておいた布団に向かう。
そのままばったりうつぶせに倒れこむ。
「ええっ!? やだ、真壁くん!!」
焦って覗き込む蘭世の目と、俊の、完全に座った目がぶつかる。
布団についた腕を引き寄せ、酔っているとは思えないほどの早業で強引に組み敷く。
握っていた小瓶が転がる。
「ま……」
名を呼ぼうとする唇を塞ぐ。ビールやらサワーやら色んなお酒が混ざった味。
もともとお酒は飲めるけれど、速攻で酔う蘭世はそれだけで酔ってしまいそう。
……勿論酔うのはそれだけが理由ではないけれど。
そのまま俊はおぼつかない手元で蘭世の服のボタンをはずしていく。
「……ん……」
胸元に口付けられ、身体が震える。
言葉の数が増えたのと同じくらいいつもより多いキスと、
欲しい単語を連発したのと同じくらいいつもより絶妙な指遣い。
まだ冷えたままのコートが肌に触れ、ほんの少しだけ意識を戻してくれるけれど
激しい俊の愛撫が一瞬にして快楽へと引き戻す。
それに応えるように、既にとろけてしまった蘭世の蕾に
絡みつくように舌を這わせる。
片手で蘭世の脚を支え、もう一方の手で邪魔な自分の衣服を脱ぎ捨てる。
それと10センチも離れない位置に転がった小瓶を手に取り
しばらく沈黙して蘭世を見おろした。
「……ま、かべく……?」
「……土産っつったけど、これ、食うわ」
「え。……それは、全然いいけど……」
……なんで、今……? いぶかしげに、ちょっと残念そうに自分を見つめる蘭世を尻目に、
リボンをほどく。
悪戯っぽく微笑んだ俊の顔が見えて……
「ひゃあっっ!?」
俊はそれを蘭世の下腹部に向けて傾けた。
とろりとそれが重力に従い落ちていく。
「月……作っちまった……」
「〜〜〜〜〜っっ。」
蘭世の白い肌に円く形作ったそれは、さながら満月。
指を絡めて手をつなぎ、俊は自ら作ったそれを丹念に舐めとっていく。
「……ん」
俊はその舌を再び蘭世のそれに絡めていく。
ねっとりと押し付けられる唇。でもそれが嫌じゃない。
俊は蘭世を抱き起こし、小瓶から指ですくいとり
改めて蜂蜜だけを口に含ませる。甘味と香りが口中に広がる。
それを吸い取るかのように再び深い口付け。
「おいしい、ね……」
「な」
「だから……」
恍惚の表情を浮かべ、身体中の力が抜けてしまった蘭世の脚を大きく開く。
「こっちにも、味わわせてやらなきゃな」
「……え……?」
俊は再び小瓶からたっぷりとすくいとり、その指を蘭世に侵入させた。
「……あ……っ!!」
別の生き物のようにうごめく指。奥の奥まで突き上げられて
おもわず声が漏れる。くちゅくちゅと蘭世の羞恥心をあおる音が響く。
しがみついた腕が細く頼りなさげで、俊はいつもこの時
一種の征服感を感じていた。
消えてしまった月がいた部分が俊の肌に密着するのを感じながら
固く立ち上がった蘭世の胸の中心を舌で転がす。
「まあ、もっとも……」
うっすらと汗をかいた額に軽く口付ける。
荒い呼吸がますます俊を興奮させる。
「いちばんおいしいところ持ってくのは、こいつか……」
と、さっきから自分の存在を激しく主張していたそれを
蜂蜜と蘭世の蜜がまじりあって大きな泉を作っているそこへ
ゆっくりと押し込めていった。