今日は、起きるのがいつも昼すぎなので、延ばし延ばしになっていた
お約束のデート。
「ずっと来たかったんだよねっっ」
行こう、と決めたときはオープンしたてだった、買い物も遊びも食事もすべて賄える複合施設。
今では人手も、混んでいるとはいえ当時の勢いほどではなく、
結果的に考えれば良かったかもしれない。……と、開き直りつつ……。
まずは蘭世の熱望により、ショッピング。明らかに女性向けにつくられた空間で、
店の外で待つのはちょっと居心地が悪いけれど。
『他ではあまり見ない化粧品』の店に入り込む勇気もなく、ぼうっと待つ。
出てきた蘭世は、普段はまったくしないくせに、
店員にちょこっと薄化粧なんかしてもらったりして。
「どう?」
……いや、どう?って。………………。
「……悪くない」
あさっての方を向いて答える
「エヘヘ」
今のところ最高の賞賛に満足し、指を絡めて手をつなぐ。
アミューズメントに向かうと、周りは残り少ない休みを目一杯楽しもうと
集まったカップルが大半。
ふーん、ああいうのがああいうのとつきあうわけね。
う。おまえ公害だろうその化粧の匂い。
おいおい、装甲車か? お、大関発見。
ものめずらしく見回す俊に、ぱたぱたぱた。必死で駆け寄る蘭世。
「おまたせっっ! ごめんねー。すっごい混み混みだったよ〜。お手洗い!」
…………。
今まであまり他と比べたことなかったけど、こいつって……。
「?? どうしたの?」
「何でもねえ。……手洗ってきただろうな」
「ひど───い! ちゃんと石鹸で洗ってます! もうっっ」
「お、ホントだ」
つめたい水で冷えてしまった手を再びつなぐ。
ちょっと顔の筋肉がさっきより緩んでいる。ちょっと誇らしげに。
「あ、あれ乗りたい!」
蘭世が指差すアトラクションは。
座ってベルトをしめてそのままじわじわじわと上空へつれていかれて、すぐさま急降下。
そのスリルが売り……なの、だけれど。
「お、いいな……あ」
乗客の半分は女性。そのうちミニスカートが8割。
そしてその全部が……風圧で思いっきりめくれている。
脚の付け根まで見えてんぞおい。
「…………」
蘭世の格好を上から下まで見下ろす。
ミニスカート(といってもごく一般に見ると控えめな丈なのだが、俊にしてみれば超ミニ)と
ロングブーツ(出がけにショートブーツを履こうとしたのを
無理やりこっちを履かせた成果)。
「う……」
「?」
「………………あれは、今回はなし」
「えええ!? 何で〜〜〜!?」
「……ば、馬鹿、また来て、そんとき乗るって意味だよ。また来るだろ?」
「!! そ、そっかあ……」
うふふ。満面の笑みを浮かべて通り過ぎる。
ということで。今は観覧車の中。
混んでいても絶対相乗りをさせないのがポリシーらしく大分待ったけれど、
窓から眺めると日差しがオレンジに変わりつつあり、割といい時間帯。
「うわあ……。高いねえ……」
側面の窓にぺったりと手のひらとおでこをくっつけはしゃぐ蘭世。
「うちまで見えちゃったりして」
「まさか」
「見えるってば。ほら、あそこ」
「え?」
窓に手をつき、眺めようとした瞬間、ぐらりとゴンドラが揺れ、蘭世を窓に押しつける格好になる。
「きゃっっ」
「うわ! わ……悪い…………」
いつもどおりの髪の香りと、いつもとちがう化粧品の香りが俊を捕らえる。
「……ま、真壁くん……?」
苦しいよ。そんな台詞を自分の唇で封じ込める。
観覧車を下りるなり、俊はわき目もふらず蘭世の手を引いて
ずんずん歩いていく。
出口をでて、この橋をわたると確か公園があって。
実は違うルートを使う客のほうが多く、人通りが少ないそこは、
製作者はまったくそんな意図はなかったのだろうけれど
一度ついてしまった火、そして燃え広がる炎を鎮めるための舞台としか思えない。
「えっ、こ、この芝生、立ち入り禁止じゃないの?」
蘭世の言葉には答えず、更に木の植え込みの方に進む。
大きな木の幹に肩を押し付け口付ける。
突っ走る心と裏腹に、かじかんで言うことを聞かない手には
ダッフルコートの紐がまだるっこしい。
冷たい風、冷たい空気。脱がさず封だけ開けて体の向きを反転させる。
ミニスカート(俊視点では……以下略)のすそをたくし上げて手を侵入させ
タイツとショーツをひきおろす。脚が開く程度……ブーツの口あたりまでで
それをとめて指を真ん中に滑らせる。
「……や、真壁く……」
まだ正気の蘭世。こちらを向こうとするのを押さえ、口を手で塞ぐ。
もう片方の手の動きも早める。強める。そして奥まで。
「ん……っ!! ……ぅ……」
鼻の頭で長い髪をかきわけ、白い項にキス。
唇に密着してその動きを封じた手のせいで、甘い吐息は聞こえないけれど
幹に軽くついて身体を支えていた腕が、
だんだんすがるようにそれを抱きしめる形になって。
けして寒さのせいではない腰の辺りの疼きが、下腹の力の入れ具合が、
さっきよりすごく強くなって。
俊はもう押さえる必要のない手のひらを、蘭世の脚に移動させて大きく開く。
「……っあ……ぁ」
寒いけれど、あたたかい結合部分。
俊もがっちりと後ろから蘭世ごと幹を抱きしめて
ゆっくりと、動きを早めていく。
日の落ちるのが「つるべおとし」なのは、秋だけじゃなくて勿論冬も同じ。
あたりはもうとっぷりと暗くなっていた。
「……どうするよ? これから」
自分で解いたコートの紐を戻しながら俊は蘭世の顔をのぞきこむ。
「ん〜〜〜〜〜……」
せっかくプロにしてもらったさりげない化粧も
汗と、俊の手のひらのせいで落ちてしまった。
あとでリップ塗らなくちゃ。
頭の片隅でそんなことを考えながら、蘭世は悪戯っぽく微笑む。
「もっかい観覧車のりたいな。半分しか景色見れなかったから」
「〜〜〜〜〜〜。すみません……」
ちょっと反省。すぐ忘れるけど。とりあえず謝りつつ
俊はおでこを蘭世のおでこにこつんとあわせた。