大晦日。
だからといって、魔界人の自分たちが生活パターンを変える必要はまったくないはずなのに、
それなりにお約束に従ってしまう。
ちょっと奮発した車えびのてんぷらをのせたおねぎと七味どっさりの蕎麦を食べ、
いつも以上にしっかり身体を洗い……まったりと、残り少ない『今年』を過ごす。
コタツにとっぷりとつかってみかんの皮をむきむき、テレビを眺めている蘭世。
洗った髪はアップにしてまとめてある。

「いつもどおり」のはずなのに、いつも以上に胸が騒ぐのは師も走る忙しい日だから?
ゆっくりと、蘭世の肩に手を伸ばす。

「……紅白見てたいか?」
「?? どっちでもいいけど? もう、演歌ばっかりになっちゃったし。
あ、どっちが勝つかは見たいかな。……でも、真壁くんの見たいチャンネルに
変えちゃっていいよ〜」
「…………」
「はい、リモコン。……あれ、今年は衣装おとなしいね、この人。」

……テレビはどうでもいいんだよ。視界に割り込む。

「え。……あ……」
『あとは寝るだけにしちゃおう』。そのときは純粋にそう思って敷いた布団に
その身体を運ぶ。





「……ん」

唇を合わせたままパジャマのボタンに手をかける。
自分の衣類をけして俊の部屋に置かない蘭世は、毎回ここに来るたび着替えを運んでいた。
お泊り解禁になって2ヶ月近くはパジャマも運んでいたのだけれどやめた。
なぜなら大半が不要な夜をすごすから。
それ以来、俊のものを着るようになっていた。

俊にしてみれば、ボタンが取れようがちょっと破れようが所詮自分のもの。
遠慮なく急ぐ心そのままに脱がしていく。

初めは戸惑った下着も、もう手馴れたもの。自然な動作で取り去り毛布をかぶる。
火照った身体が冷えないように。

別に嫌なわけではないのだろうけれど、無意識に閉じようとする脚を
やさしく開いて指で悪戯。人差し指より中指に反応することは、
とろりと溶けた瞳は知っているのかどうか。
鍵状に軽く曲げて、そこをわざとゆっくり弄ぶ。

「……ふ……ぅ」

他の人がどうなのかなんて知らないけれど、
すぐ声が出てしまう自分が恥ずかしくて、蘭世は目を強くつぶる。
湿っていた髪がすっかり冷えて、首筋に当たる。
……あれ、バンスクリップどこいっちゃったんだろう……。
妙に冷静に分析する心が消えるのはもうすぐ。
つけっぱなしのテレビの、浮かれムードの声がだんだん遠くなる。
それを見計らったように俊は細い腰を引き寄せた。

「や……、ぁあん!!……ま、か……」
「ん……?」

頼りなく肩を押しながら喘ぐ蘭世。そこで、ハイそうですか、などと
言えるわけがない。愛しすぎて。
それに、言葉とは真逆に身体のほうは。

「…………っっ」

本当は求めてる。口には出さず俊は、かわりに激しく攻めたてた。
止めることのできない官能的な声とともに蘭世は堕ちていく。



かくり。力が入らない腕を持ち上げて唇をあてる。
自分の手で一度果てるのを見ても、今日はなんだかおさまらない。
時計をみるとすでに12時を回っている。
……年が変わったせいだろうか。……まさかな。
蘭世の直後に一度鎮まったはずなのに、すでに復活してきたそれに細い指を触れさせる。

「……あ……?」

寝ぼけたような顔でこちらを見る蘭世。そりゃ笑顔は好きだけれど、
一番好きなのは、「その時」に我に返ったときの顔。それが再び俊を狂わせる。
蘭世を抱き上げ、上下逆転。自分の左脚をまたいで座らせる。

「!!」

いつもは「その時」、強く抱きしめてくれる俊が、紅く上気したままの顔。
あまり目にすることのない俊自身が下腹に触れ、蘭世は息を呑む。

「……ひゃ……」

無言で腰を少し浮かされ、再び引き戻される。突き上げる俊の動きと交差して
いつもより奥まで入り込む。さっきと同じ、いや、それ以上の熱さ。

「〜〜〜〜〜〜っっ」
「……ふ」

さっき。十分すぎるほど愛されて、もう駄目って思ったのに。
疼く自分を止められず、蘭世も俊の動きに合わせて踊る。
俊の脚にしがみつきながら。
俊も蘭世の重みを感じながら再び同じ熱を放つ。





カーテンの合わせ目から入り込む日差しに負けて目を開くと、
蘭世がこちらに背を向けて着物を着付けている。
手際よく襦袢を合わせ、紐を組む。
詳しいことは知らないけれど、濃い緑色の地に花車の組み合わせが上品で、
蘭世に良く似合う気がした。
しゅるり。帯を結び、ふとこちらを振り返る。

「ひゃあ!?起きてたの!?」
「……ん」

布団にもぐったまま、目をこすりつつ応える。

「もう〜〜〜。声かけてよう」
「いや……」

後々のために、見ておかないと。……手順は逆だけれど。