「…………くそっ! まだかよっ!!」

叩きつけるように切った公衆電話
その直前までそれは、留守電メッセージに切り替わることもなく
話し中を示す機械音を流していた
ふと思い立ち、掛けてみたその時と、それから1時間、30分、10分それぞれあけて
掛けなおしたその時も



午後のおだやかな日差しの差し込むリビングで、電話の向こうの旧友と
久しぶりに昔話に花を咲かせていた蘭世の目の前に、突然誰かが現れた

「…………」
「きゃっ!! あ、あなた……一体、どうしたの!?
あ、ご・ごめんねかえでちゃん、ちょっと……えっと……また電話していいかなあ?」
『うん、いいよ、またね〜』

電話の向こうで気楽に別れの挨拶をする旧友に挨拶を返し、かろうじて平静を装い電話を切るが
愛する夫が突然何の前触れもなくテレポートして帰ってきた驚きに蘭世は動揺を隠しきれない

「どうしたのって……。おまえ、何時間電話してんだ?」
「え? 電話? ……あ、ごめんなさい。
お昼ちょっと前くらいにかえでちゃんから電話があって……
すごい久しぶりだったから、それからずっと喋っちゃって……」
「…………っっ! ばかやろう!!」
「え!?」

突然出てきたかと思えば、これまた突然の剣幕で怒鳴りつける夫に
事態をイマイチ飲みこめていない蘭世は目を白黒させている

「何時間喋ってんだ! なにかあったら困るだろう!」
「そ、そんなに怒らなくても……」
「うるさい!」
「……や、ちょっ……あなた!?」

俊はいつもより乱暴に蘭世の腕を掴みソファに押し倒すと
結んだ髪から覗く耳朶からその中に舌を滑り込ませる

「……あっ……」

背筋がぴくんと震え力が抜けた首筋に唇を当て強く吸う
シャンプーの残り香が鼻腔をくすぐり、猛る俊の心と体を煽る
控えめに入ったスリットから手を潜り込ませ内股を撫で上げながら
項に舌を這わせ、少し降りてまた舐め上げ……
そのたびに蘭世は肩を震わせながら甘い吐息を漏らす
片手でもどかしげに釦を外し、ゆるやかな稜線を描く丘の中心に咲く蕾の一方を指で捻るように摘みあげ
もう一方を口に含み舌全体で包み込む頃には
ストッキングの上から中心の合わせ目をなぞっていた掌にしっとりとした感触が伝わってきていた

その掌を押し戻すかのように閉じようとする脚の間に無理矢理分け入り
俊は床に自らの腰を落とす
曲げた膝を押さえMの字に開いたその中心が丁度顔の高さになり
鼻をこすりつけると、甘酸っぱいような香り

「……んぅ……っっ」

少しずつ、でも確実に敏感になっていくそこに与えられた刺激にきちんと反応する体
いつもより高いトーンのこの声がとても愛おしい
片脚から手を外し頭で支えながら俊はストッキングを勢いよく引き裂く
布の裂ける小気味よい音が響き、品のいいレースにあしらわれたショーツが顔を覗かせる
その脇から指を差し入れ、すでに零れ落ちそうなほどの蜜を確かめながら
その中を探るように蠢かせ、舌をもう一つの芽に使わす
がくがくと震える脚
ただ崩れ落ちそうな自分の意識を保とうと必死で、抑えることのできない悲鳴にも似た嬌声が
部屋中に響き渡る

「……あ、っんあ、ああ、ア……っ!!」

すがるように空を切る蘭世の細い腕
安心させるかのようにそれを優しく支えて唇を当て、一方でショーツを両膝まで引き下ろし
蘭世の脚の自由が利かない状態のまま自分自身を蜜壷に入り込ませる
はじめはゆっくりと、次第に速度を上げ、そのリズムに合わせて踊る黒髪と
頬を紅潮させ自分の行為に反応して浮かべる艶かしい表情を眺めながらほどなく俊は達し
圧し掛かるように蘭世の胸に崩れ落ちる





「携帯電話、買うか」
「……ふふ」

呼吸を整え、外した釦を戻しながらつぶやいた俊の言葉に、蘭世は微笑む

「なんだよ」
「ううん……だって、私はおつとめしないから特にいらないよねって話したばかりだったのに……」
「…………別にあっても困るもんじゃねえだろ。今日みたいに、連絡取れなくて困る時もあるかもしれねえし」
「そうね……」

自分の腕の中で啼く相手が
自分以外の男に惚れることなどないことくらい判っている
けれどその一方で、自分以外の誰かに笑顔を向けること言葉を交わすこと
その全てが許せなくなっている
そんな自分の心の奥の裏にある気持ちに、彼が明確に気づくのはまだ遠い先のこと