「ま……真壁く……っふ……」
息も次げないくらい言葉も次げないくらい、俊は蘭世の唇を吸う
耳の穴に舌を差し入れ耳朶を齧り首筋をなぞり
コートとセーターの首元を一気に引き下げ、鎖骨のあたりを唇で挟む
右手は蘭世の左手と指と指を絡めあい、床に押し付けるように固定
空いた左手は、長めの丈のスカートの裾から無理矢理侵入して
尻から腿、内股のあたりをくまなく這い回る
「…………ゃ……ぁ」
俊のコートを掴み、わが身から離そうとする右手に力がこもり
よじりながら俊の手から逃れようとする足先から
履いたままだった靴がころん、と落ちる
消え入りそうな抗議の声を塞ぎ、俊は蘭世のコートを脱がせ放り投げる
浮かせた体を反転させてうつ伏せに押さえ込み、セーターを引き上げ
その背を舐め上げる
「……ぅんっ」
びくんと体を震わせるのを感じながら、荒い息を隠そうともせず
自分のコートとセーターを脱ぎ捨て、その胸を蘭世の背に擦り寄せる
ぴったりと密着しあう肌から伝わってくる体温が、そのまま快楽の波となり
俊を急がせ、もっと先を求めさせる
―――もう、止まらない
タイツとショーツを一気にずり下げ、腰を抱え込むように持ち上げて
柔らかくあたたかく膨らんだ胸を掴むように繰る
露わになった内股を押し開き、指を滑り込ませ
まだ他者の侵入を許すことに慣れていない入り口と内壁を少しずつ押し広げる
喘ぐ声と声との間隔が、その動きに合わせて少しずつ早くなる
くねるように回しながら引き抜いた指を口に含むと、絡みついた蜜が、甘く苦い
再び体を反転させ、声を殺すのに精一杯の蘭世の頤を持ち上げて
覆い被さるように口づけながらジーンズの釦を外す
ファスナーをおろす間ももどかしく、猛り狂う自分自身を開放し
蘭世の開いた脚を押さえてその中心に擦りつけると
もしかすると蘭世のそこ以上に敏感になっているかもしれないそれの先端には
根元に付着した蘭世の名残よりも、潤みが滲み出ていて
正直な反応を寄越してくる
早く、そこへ、いきたい と
「…………く、ふっ」
「……あ……っぁああっ……っぅあ!」
言葉のような吐息のような、くぐもった声をあげながら俊が入り込むと
たまらず蘭世は悲鳴を上げる
三日前ほどの痛みではなくとも、そこは、まだ
「ま……かべく…………っっ……!」
思わず立ててしまった爪の先が、俊の背に食い込む
その痛みにも、勿論蘭世の悲鳴にも、気づいてはいるが
それでも俊の本能は、自分の動きを止められず
肩に掛けた蘭世の脚を開放することなく、更に深く、奥まで進み
少し引いて更に奥へと貫き…… を繰り返す
のけぞるように反らした首筋に噛みつくと、整えるすきもない熱い息が漏れ
蘭世の髪をかすかに揺らす
鼻先をかすめる香りは、いつもは甘くふわりと漂い、安らぎをくれる筈なのに
今の俊にとっては、動きを加速させる燃料にしかならない
苦痛だけでなく悦楽へと、確実にその表情を変えた蘭世の声が途切れるころ
取り憑かれたように、全身を、自分自身をも擦りつけていた俊も
ほどなく一度目の限界を迎え、崩れ落ちるように倒れこむ
「…………………………っっ」
息を整えながら、額に貼りついた髪を払い、ゆっくりと顔を上げる
目の前には、汗と涙とが混じりあい濡れた頬と
まさに寝乱れたさまを残した肢体
たくし上げたままのセーターから覗く乳房が妙に艶かしく
蝶を招く花のように匂いたち、俊を強く吸い寄せる
蘭世の背を支え、裾をゆっくりと持ち上げながら脱がせていく
「…………ん…………」
かすかながらに、体に何かが触れられる気配に気づいた蘭世がようやく目を覚ますと
そこは先までのキッチンではなく、俊の部屋
硬く冷たい床ではなく、いつの間にか敷かれていた布団に
一糸纏わぬ姿で横たえられていた
「……あ……れ…………、真壁くん……?」
呼びかけられた俊は、返事の替わりにその唇を蘭世の唇に重ねる
その時を待っていたかのように、唇は体のラインをたどりながら少しずつ下りていき
指の動きも再び、快楽を導くための動きに変わっていく
「え…………っっ!?」
慌てて閉じようとする脚の動きを素早く制し、俊は
彼自身の名残を垂らし、妖しく光る秘所に顔をうずめ、鼻先をこすりつける
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!」
声にならない声を、聞こえないふりをして俊は、蘭世に再び溺れていく
狂気と紙一重だということ
それに本人が気づくのは、まだ少し先のこと