・くるめく:くるくる回る。目が眩む。


* * * * *







血のような赤い唇、黒檀のように黒い髪、そして、雪のような白い肌を持つ少女
むかし、眠りにつく前に読み聞かされたお伽噺のひとつに、確かそんな一節があったような気がする
長い髪をよりわけて彼女の衣服をするりと解いた瞬間、俊はふと思い出した





電気を落とし、真っ暗になったその部屋で、その肌はまさに雪のように白く淡く浮き立つ
自らの衣服を脱ぎ捨てるのも忘れて俊は、しばしその白に目を辿らせた

「………………っっ」

小さなヒーターをめいっぱい焚いているとはいえ、衣服を奪われたまま放っておかれる“だけ”ではちょっと寒い
おまけに、隅々をじっと見られているのであろうことは、なんとなく、気配で感じることができる
何度体を重ねても、改めて見ているということを認識するのにだけは、慣れることができない
蘭世は思わず、その肌を摺り寄せるように俊に抱きつく
しっとりとやさしい彼女の香りが、俊の鼻先に漂った

「……あ、悪りい……」
「んん……」

ふるふると振った頬に手を添え、やわらかな耳朶を軽く咬む
もう一方の手は忙しく自分のシャツのボタンを外し、ジーンズを下ろして
彼女同様、彼そのままの姿になり、横たえたその肌に、静かに身を重ねた

寒いだとか、くすぐったいだとか、そんなまともな感覚が残っているのもあとわずか
自分の唇を押し包むかのようなキスを、蘭世は黙って受け入れる
薄く開いた唇の隙間から入り込む舌を懸命に追い、絡め取られて
甘ったるくゆるゆると力の抜けていく体を支えるかのように、俊の背に腕を回した



その肌が、雪のようであって、けれど雪とは違うと思わされるのは
ただ触れるだけで、胸のうちをとろけるほどに熱くするせいかもしれない

はじめは指で、のち唇で、舌で。奥深くまで味わいたくなるその欲求のままに
狂ったように求め、追いつめる。───彼女ばかりでなく、自分をも



「…………あ」

波打つ豊かな髪を指に絡ませたまま、首筋から胸元へと、這うように降りる唇と
体のラインをなぞるように撫でまわす俊の指先に反応し、小さく声が漏れた
彼女自身にも見せつけるように、わざと顔を離し、その分長く伸ばした舌の先で房の中心をなぶる
もう一方を指で捏ねながら目をやると、それをうっとりと見つめる視線とぱちりとぶつかった

いつもは、どちらかといえば可愛らしいイメージをもつ彼女の
今のような上気した顔は、ぐっと艶っぽく、一気に大人びて思えた
それはそれで、ずっと眺めていたいような魅力を備えている
けれど、すべてを自分に託すかのような、どこか頼りなさげな薔薇色の頬は
皮肉にも、俊のやさしさ以外の部分をこれ以上なく煽るのだった

舌先で転がすのをやめ、咬みつくように房を吸う
息をもらす唇に指を添え、それを口に含んだ彼女の舌の動きがおぼつかなくなるのを見計らい
再び唇を重ね、ねっとりと、口の中じゅう探るように舌を這い尽くした
端から唾液がひと筋垂れていくのにも構わず、攻め立てるその動きに
蘭世は眉根を寄せて喘ぐ

唇を解放すると、はっと小さく息をつき───気を抜いたその隙をついて俊は
顎を傾けさせ、無防備な耳へと舌を忍び込ませた
それだけでは飽き足らず、すらりと伸びる脚をぐいと開き、こじ開けた中心に手を滑らせ
少し曲げた指の腹で、押しつぶすように芯を弾く

「ひぁっ…………!」

その瞬間、蘭世はぐっと肩を仰け反らせ、かくかくと首を振った
指はぎゅっとシーツを握り締めており、覗き込んだ俊の顔を非難めいた目で見上げた

「違うのか?」
「……!! ち、違わない、けどっ…………!!」
「…………ああ、両方か」
「そ、そうじゃなくて…………んああっ………!!」

逃げるように、あるいはそれ以上を求めるかのように小刻みに震える腰を腰で押さえ込み
空いた指をつぷ、と侵入させる
奥を穿りながら表を弾く、不自然な角度に曲げた各々の指の形状を思いながら、俊は
意外に自分は器用なのではないかと思った

静かに伝い落ちる蜜を、ゆっくりと舌で掬う
張りつめた足指の力が抜けるまで、丹念にそこを舐め尽くしたのち
ようやく俊は、熱り立つ自身をゆっくりと沈めていった








「う───、さむいねっっ」
「……うん?」

俊の腕からもそもそと抜け出し、蘭世はカーテンをそっと引いて外を眺める
もともと人通りの少ないその地域は、真夜中であることも手伝い、水を打ったように静か
薄く雲のかかった月と、ところどころの切れ間に浮かぶ星とを見上げながら
ふと思いついたように彼女は言った

「雪……降るかしら」
「雪? ……まだだろう、多分。そんなイキナリ寒くなられても」
「あらっ」

俊は毛布をかぶり、素肌のまま飛び出した蘭世の後ろに進む
そのまま抱きしめつつ、毛布ですっぽりと自分を包み込んだ俊の頬に
ぺったりと頬をくっつけ、蘭世は笑う

「雪って、降る前よりも降っちゃった後のほうが、意外にあたたかいんですって
ちょっと前、テレビかなにかで聞いたの」
「…………へえ」

それは確かにそうかもしれない
ということは、やっぱり、雪なのかもしれない

そんな、真顔では決して口にできないようなことを思いながら
じんわりと熱を吸い取るかのように、俊はそれを抱きしめる
改めて強く回された腕に腕を絡めながら、蘭世はふふ、と笑みをこぼした