部屋とわんこと君と僕

何度か足を運んだけれど、いまだにひとりでいると落ち着かないこの部屋は、うちのアパートの二部屋分は余裕であるだろうな。そんなことを思いながらベッドを背もたれにして座ると、ジョンがてとてとやって来て、ぼくの膝にあごをのせて寝そべった。まあまあくつろぎたまえよ、とでも言いたげな顔で。ご厚意に甘えてその白いつややかな毛並みを撫でていると、たくさんのお菓子とジュースの載ったお盆を運んできた若林くんが、呆れた顔でこちらを見下ろしていた

「まったく現金なヤツだな」

若林くんはお盆を床に置いて、ジョンと自分でぼくをはさんだ位置に腰を下ろし、気持ちよさげに目を閉じているジョンの頭を、わしわし梳かすように撫でる。現金、って?

「こいつ、一応番犬でもあるから、おれ以外の相手にそうそう懐かないんだぜ? 修哲の奴らも何回かここに来たけど、たまに唸ってる」
「そうなんだ」

いつも、ぼくが腰を下ろしたのを見計らうかのように隣へやって来て、手持ち無沙汰を持て余したぼくをおもてなししてくれるから、誰にでも愛想のいいおりこうさんなのかと思ったら、違ったらしい。そう言えばロベルトも初対面のときめちゃくちゃ吠えられたと言っていたっけ。まあこの場合、そもそも対面のしかたに問題があったような気がしないでもないけど

「ペットは飼い主に似るって言うからな。誰彼かまわず尻尾振るんじゃないあたり、しっかりおれの意思を受け継いでる」
「…………」

なぜか誇らしげに言う飼い主と、なんとなくキリッとした顔つきになった飼い犬。そうだね確かにきみたちよく似てる気がする、けど

「きみはみんなに優しいじゃない」
「優しくするのと、懐くのはちがうだろ」
「……。そりゃ、そうだけど」
「まあ、岬に言われれば、お手でもなんでもするな」
「お手、って……」

右と左と、どっちが犬なんだか分からないよ……

「こっちの膝、空いてるよ」
「…………」

空いている膝をぽんぽん叩くと、若林くんは目を丸くした。そんな顔で見ないでよ。ぼくだって、柄にもないこと言ってるってわかってるんだから

「ジョンと同列かよ」

あ、そっち?
だって言い出したのはきみなのに

「いやならいいけど」
「そうは言ってない」

と、若林くんは憮然としつつ、ぼくの膝を枕にしてごろんと横になった。少し堅めの髪を撫でると、ちらりとこちらを伺って、手に手を重ねてきたけど、それってまさか「お手」じゃないよね?
懐いてる。そう言いながら甘やかされてかまってもらって、見えないしっぽを振りまくってるのは、実はぼくのほうだと思うんだけどな

「……ねえ? ジョン」
「だからなんでそこでジョンと話すんだよ」

ジョンがちらりと若林くんとぼくと、握られた手に重ねたぼくの手とを見比べたけど、たいして興味もなさそうにまた目を閉じた。しっぽをゆらゆら振りながら