なるかみときみ
窓を叩きつける雨と、それと競うようにして轟く雷の音。真夜中にも関わらず、傍若無人に振る舞う天の声にむりやり促され、岬は目を覚ました
こわごわと窓に目をやると、一筋の光が見えたかと思うと、息を継ぐ間もなく、腹に響く威嚇的な雷鳴がやってきて、びくりと体が震える
「……岬?」
「あっ……ご、ごめん。起こした?」
「どうした」
「……かみなりが……」
「雷?」
隣で寝ていた源三も、寝惚けまなこをこすりながら窓をちらりと見やり、『まあ、鳴ってるな』とでも言いたげな、さほど感慨もなさそうな顔で岬の方を向き直す
理由を尋ねるわけでもなく、ただ見ているだけ。けれどかえってその視線が、いまだ胸に巣食う昔話をゆるゆると引き出させる
「むかし……五歳くらいの時かな? 」
「うん」
「とうさんが河川敷で絵を描いてるそばで遊んでたら、突然すごい雨が降って来て、目の前の木に雷が落ちてね。バキバキバキバキー! って。それ以来ダメ」
「…………。さらっと言ってるけど、なかなかの大事件だな」
枕にしていた腕と、背に回されていたもう一方の腕と、それぞれにほんの少し力がこもる。声がくぐもっているのは、半分寝ているからか。子供を寝かしつけるようにぽんぽんと背を叩いて、なんでもないことのように囁く
「まあ、大丈夫だ」
「…………」
なんの根拠もない筈なのに、彼の『大丈夫』は、こんなにもほっとしてしまうのはなぜなのか
すうすうと規則正しく刻まれる寝息と、あたたかな腕につつまれて、岬もまた、再び眠りに落ちていった