最近
欲しいものを欲しいままに手にしてきた自分の行いを
振り返るような夢をよく見る
人は命を終える直前に
自分の歴史を走馬灯のように振り返ると言うが
私も死期が近いということなのか
柄にもなく感傷的になっているだけなのか
真偽のほどは自分でもよく判らないが
私は今もその夢の中にいる
私の周りで音もなく回る情景が
ひととおり終わったところで
目を覚ますのが常だったから
いつものようにそれを眺めながら佇んでいた
だが今日に関しては
静寂を破る人の気配に振り返ると
異国の娘がこちらを凝視していた
「……?」
怪訝そうな表情を浮かべてしまっていたのだろう
少女が敏感に反応し、まくし立てる
「××××××」
言葉の意味は判らないが、焦っていることは見て取れた
努めてやさしく髪を撫でると
ふわりと微笑み私の隣に腰をおろした
その娘はくるくると表情を変えながら情景を見つめ
私の話を聞いている
徒然なるままに語りながら
いつもより過剰なまでに饒舌な自分に私は驚いていた
自分の弱みを見せることは即ち
敗北へとつながることだから
誰にも本音をもらしたことなどなかったというのに
何故この娘にはこうまで自然に
心を開いてしまうのだろう
言葉が通じないという前提があるからだろうか
私は誰かにずっと話を聞いてもらいたかったのだろうか
そういえば
ここまで近しい距離に他人の存在を許すのは
久しぶりのことだ
「…………」
私は言葉を止め
その娘の、柔らかい頬から顎にかけてのラインをなぞる
びくり、と反応し
この世の穢れたことなど何も知らないような瞳で
まっすぐに私を見返し首を振る
「××××××」
拒絶、しているのは判る
それでも私は
「××××××、×××…×××!」
強引に娘の体を抱き、組み伏せる
娘の長く美しい髪からほのかにこぼれる
花のような香りに包まれながら
今まで感じたことのなかった
やすらぎを感じていた
娘の持つ雰囲気がそうさせるのだろうか
見ないフリをしていた傷が
すこしずつ癒えていくような気がする
「×××」
私の胸の中で娘は
子猫のように震えながら
潤んだ瞳で私を見上げた
途端に私の意識の中に
イメージが流れ込んでくる
……背の高い、男?
これはこの娘の思考なのだろうか
『×××…××××!!』
やはり意味は判らなかったが
ひとつだけ
強く繰り返されるフレーズがあり
そのフレーズが響くたびに、この男の姿が流れ込んでくる
「…………」
この男は娘の想い人なのだろう
それでもこらえきれず私は
娘の花弁のような唇に吸い込まれていく
あくまでも侵入を拒もうとするのを抉じ開け、舌と舌を絡ませると
たったそれだけのことなのに、甘美な疼きが私の背を走った
腕を振り足をばたつかせ
娘は娘なりに抵抗を続けていたが
私にとって娘の体はあまりに華奢すぎるから
それを制することなど造作のないことであり
今まで無数にしてきた口付けでは感じたことのない
心を満たしていく至福感を押し留めることはなかった
ゆっくりと顔をあげると
ぎゅっと瞑った娘の瞳の端からつぎつぎと涙がこぼれていくのが見えた
ああ、そんな哀しげな顔をしないでくれ
そんな顔をさせてしまった自分を許せなくなってしまうから
何を青臭いことを……
今までのようにことを運んでしまえば
所詮女なのだから悦んで自ら足を開くだろう
心の端でもうひとりの私が今の私をせせら哂う
恐怖に震える表情すらも愛おしく思え
衣服に守られた箇所もきっと
透き通るように白いに違いない肌に
触れたいという気持ちがだんだんと強まりゆくのを感じたが
それ以上に
この娘だけは今までとは違う
心と心を触れ合うことができる存在になりうるという
直感的に感じた想いが娘の腕を掴む力を弱めさせた
そっと娘の涙を拭い体を起こしてやり、垂れる前髪を分け額に唇を寄せる
ふと眺めると周りの情景は、私が目を覚ます頃合いへと近づいていた
私はもう一度娘の髪の香りを胸いっぱいに吸い込む
この香りさえ覚えておけば
私はお前を探し当てることができるだろう
だからもう少しだけそばにいてくれ
私の目が覚めるまで
「ランゼ……」
私は娘の名前をつぶやいた