「よーし、きょうはとことん飲むのらー」
「うわっっ。ビンごと飲むなってっっ」
飲み屋さん3軒をハシゴして帰ってきた二人。
もともと酒が苦手ではなく、体質も受け入れ態勢万全な俊はまだ余裕なのだが、
酒を飲む行為そのものが好きだが、体質はそうでもないんじゃないかという蘭世は
文字通り「泥酔」。かなりハイな状態になってしまっている。
「わたしけっこう飲めるんだからーっ。ほらー。飲め飲め―――」
と、まだ半分も飲み干していない俊のグラスに更に酒を注ごうとする。
「だからこーぼーれーるーってっっ」
「んふー?」
「いいかげんでやめとけよ」
「えー? だって、まだまだ飲めるわよう、わたし♪」
布巾を手に制止する俊の手元とちょっと釣りあがった眉を見比べてにやにやにや……
だめだこりゃ……っつーか、こいつの"飲める"ってのは、
"酔わない"ってことじゃなくて、単純に"胃に入る"ってことなのか?
たしか玉子酒でかなり逝っちゃってた記憶が……。
「あっ。そーいえば、ワインあったよねー。」
てろてろ冷蔵庫へ歩き出す蘭世。
「あ!? ばか、まだ飲むつもりなのかよっっ」
完全に千鳥足。やべえな、こいつ。そろそろ眠らせておくか……。
とか何とか思っているうちに、いきなり蘭世が派手な音を立て
キッチンの床に転がった。
「おい! 大丈夫か!?」
「…………」
返事がない。油断した。もっと気をつけるんだった。
とりあえず抱き起こしてみる。
「江藤……?」
「……んにゃああああああお♪」
「!?」
……とりあえず大丈夫らしい。
「変なところぶつけたのか?」
「ん〜〜〜っ。違うのう。わたし、今、ネコなの。でー、真壁くんはぁー、ご主人さまなのっ」
と、猫が毛づくろいをするポーズを真似て腕を舐めてみせる。
いつもより心持ち紅い舌がなまめかしい。
「んふふ。にゃ───んにゃーん」
「うわっ!?」
そのまま俊に絡み付き、首筋にキス。鎖骨のあたりまで舌でたどる。
しらふの時は考えられない蘭世の変貌に、俊のほうが慌ててしまう。
「江藤……」
「江藤、じゃないのー。ネコー。」
ぷっとふくれて見せ、再び床に大の字。
「あつ───……」
自らパジャマのボタンをはずし始めた。
顔は赤いのに、胸元はあいかわらず透き通るような白い肌。
「…………」
「ご主人さまー。あついのー。アイス食べたいの―――っっ。
食―べーさーせーて―――っ」
「ワインはもういいのかよ」
「アイスがいいのーっっ。あ―――ん。」
目を閉じ、大きく口を開けた。
「ったく……」
床に広がっている蘭世の髪を踏まないよう気をつけながら歩き、
俊は冷凍庫からカップアイスをとりだす。
「ほれ」
一匙すくって口の前に出す。
「んにゃ〜〜〜」
眉をしかめ、いやいやをする蘭世。
「はあ!?」
「もう〜〜〜っっ。わたし、今、ネコなんだよー。スプーンからアイス食べるネコなんて見たことある??
ちゃんとー、お手々に少し置いて食べさせてよう〜〜〜」
と、俊の手のひらにスプーンのアイスをのせ、音を立てて舐めはじめた。
「…………」
「ふふ。真壁くんの味がする」
アイスをすっかり舐めとり、俊の手首近くまで舐めながら言う。
上目遣いに自分を見上げ、床に這う蘭世。
舌の動きに合わせ髪が揺れる。
その姿に、俊は自分の理性の糸が切れるのを感じた。
「…………」
無言でアイスをがしがしとスプーンでつつく。
「……真壁くん……?? もしかして……怒っちゃった……??」
一瞬にして酔いが冷めたような顔で問い掛ける蘭世。
それには答えずアイスの糖分と唾液とでべとべとになった左手を蘭世の頬に添え、
もう一匙アイスをすくって自分の口に含み、そのまま口付ける。
口移し。蘭世の喉元が大きく動く。
舌をしばらく絡ませ、舌の味がまるっきり同じになった頃、中途半端にボタンのはずれた
パジャマの襟首を分け入り、白すぎる胸元に舌を這わせながら言った。
「誘ったのはそっちだからな」
二人の酒の宴は、これから。