カーテンの隙間から漏れる光に彼女は目を覚ます。
今日は学校もないから、昨日あのまま彼の家に泊まってしまったのだった。

……まだ、早いなあ……。

時計は七時をちょっと回ったくらい。もうひと眠りしてもいいくらいだ。
ふと、傍らの恋人に目をやる。

「ん……」

寝返りを打ち、こちらを向く格好になる。静かな、規則正しい寝息。

……よかった。起こしてないみたい。

すこしめくれてしまった布団をかけなおし、ゆるく握った形の手に触れてみる。
物音を立てないよう、注意深く身を乗り出し、頬に彼の手をあてる。



幸せ。
こういう動作が自然にできるようになった事も。
こんなに多く二人でいられることも。

ずっと…………。
…………ずっと?

幸せな時間のなかでふと冷静になると逆にすごく不安になる。
彼女のゆるい涙腺は、そこから自分の存在を主張しようとしていた。

「ばーか。」

頬に寄せられた自分の手に力をこめ、寝ているはずの彼が言う。

「あ! ご、ごめん、起こしちゃった?」
「おまえがあまりでかい声で考えてるから、聞こえちまったんだよ」

彼女の髪を一房、指に絡ませる。

「……ごめんなさい……」

こそこそと、自分の目元をぬぐい、エヘヘと笑う。
彼は小さく笑い、彼女の前髪をくしゃくしゃにする。

「おれ……たちは、変わらねえよ。何も」
「!」

彼女の瞳からは、耐え切れなくなった大粒の涙があふれた。

「……なんで泣くんだよ」
「……っ。だって、う、嬉しいんだもん……」
「ばーか……」

彼は、ちょっとしょっぱい彼女の瞳に、それから唇に、キスをした。
そのまま二人は再び眠りに落ちていく……