あのまま泣きやんでさよならだったら、かわいい女だったのよきっと!!
サリはベッドの上であのときのことを思い出していた。
ぐしょぐしょの顔を上げるとすぐ
優しく見下ろす瞳とぶつかった。
「気、済んだかよ」
「……あ……うん……」
ちょっと恥ずかしくなる。こんなに泣いたのはきっと生まれた瞬間くらいだろう。
「ありがとう。そして……ごめんなさい」
本当は、涙を拭いながら静かに微笑んで、こう、決めるはずだったのに。
照れ隠しのせいといえ、負けず嫌いの血が騒ぎ、口をついて出たのは……
「あなたも泣く!? このふくよかな胸があいてるわよっ」
「…………」
一瞬、かなり驚いた顔をしたけれど
「……はあ……そんな台詞が言えるなら本当に大丈夫だな」
静かに去っていってしまった……
あ───もう!!
自分で自分が信じられない!!
サリは枕をつかみ、壁に投げつけた。
ため息一つ。とぼとぼ歩いていき、落ちた枕を拾う。
もっと信じられないのは、最近の自分だ。
あの日以来、自分をやすやすと受け入れてくれた、あの広い胸が忘れられない。
一時期憧れていた少年ではなく、大人の男の胸。
……あたたかかったなあ……。
………!?
自分の考えに、自分で驚く。少年への想いは既に過去形。
注意信号。胸の鼓動が早くなる。
……好きになって、しまった!?
よりによって、失恋したよ―――、と泣きついた相手に!?
……軽すぎじゃないそれって……
いくら吹っ切れたとはいえ、それを目の当たりにした相手にしてみれば、
とてもお気楽な乗り換えに見えるのではないだろうか……
「相手が悪すぎるってば〜〜〜」
再び枕を投げつける。最近この子を投げつけてばっかりだ。
ため息をつき、枕を放ったままベッドに飛び込む。
軽いサリの身体はスプリングの動きに従い跳ね上がる。
「う〜〜〜〜」
その時、呼び鈴がなった。
いつもは2、3度なっても放っておくと去っていくのに、今夜はしつこい。
毛布をかぶり、息を潜めて、無視。
それでも一定のリズムで呼び出される。
……こっちはそれどころじゃないのよ!!
怒りに任せドアを開けると、目の前にいきなり花、花、花。
「……は?」
サリの顔の5倍はあろうかという花束が喋りだす。
「胸を借りにきてみました」
「──────!!」
花と花のすき間から、黒いマントが揺れる。