「あ―――、重かった―――! お邪魔しまーす♪」


ちょっと前に電話をよこした蘭世が、部屋にやってきた。
週に2・3度は二人で手作りの夕飯を食べるのが習慣になっていたのだ。

「ちょっと、ごめんねっっ」
「え」

声をかける間もなく、荷物を玄関に置き、大きな紙袋を手にしたまま
トイレにこもる。
……腹イタ? 
だとしたら、トイレの前に突っ立っているのも申し訳ないなと
俊は、蘭世の運んできた買い物袋を手に部屋に戻ろうとする。
……と、蘭世が個室から話し掛けてきた。


「なんかねえなんかねえ」
「……ん?」

用を足すくらいおちついてすればいいのに。
複雑な思いで振り返る。

「結婚式――――。よかったよお♪ ゆりえさん、とっても綺麗だった。
日野くんもすっごく緊張してて、おかしかった」
「ああ……」


学生のころのかってしったる友人同士のカップル。その結婚式に
俊は初めての防衛戦のため出席できなかった。
蘭世が一人で出席。まだ興奮冷めやまぬらしい。感動屋健在。


「で、ね───。その式。チャイナドレスの人がいっぱいいたの───
触発されて、買っちゃったぁ♪」

勢いよくドアが開いて蘭世が飛び出した。

「ほら!! かわいいでしょお?? あわせて扇子も買ってみました♪」


くるんと一回転して、ポーズ。
蘭世らしいセレクトの、落ち着いた紺色の地に、同色の花柄の刺繍。
深いスリットからのぞく白い脚と、このおひろめのためなのか(マメすぎる)、アップにして妙に凝った髪型。


……似合ってる。
と思いつつ、普通、平静、平常心、ポーカーフェイス。
あらゆる自分を出さないための単語をうかべ、答える。

「……はあ……いいんじゃねえの」

すたすたと冷蔵庫の前に歩き、袋を下ろす。

「それだけえ〜〜〜!?」
「似合ってるぜ」
「棒読み―――!! もう、いいです!!」

と、買い物袋から次々と野菜を取り出し、冷蔵庫におさめていく。
より分けた食材を手に、キッチンに立つ。
身体のラインにぴったり吸い付くそのデザインが
姿勢の良い蘭世の細さと、嫌味じゃない色気を
際立たせる。


「おい、その格好で作るのか?」
「ん? だって、雰囲気でるでしょ?」

手を洗い、フライパンを棚から取り出す。

「いや、そうじゃなくて……汚れたり、とか」
「……ああ! 安心して。これね、すっごく安かったんだ!
お出かけなんてできないくらい。これは、ここで着る用なの」
「……は?」
「ふふふ―――」

にこにこにこ。邪気のなさそうな微笑み。
あっけにとられる俊をよそに、てきぱきと食器類を用意しだしたかと思えば。

「はい! 今日の主菜は、えびチャーハン、副菜は、チンジャオロースと、春雨スープでーす。デザートは、いつお持ちしますか―――??」
お玉をマイク代わりに、振り返って問い掛ける。


…………ごくん。


『デザートは食前に、メニューは次の日の夜に回す』

即決でオーダー入りましたとさ♪