鍵のない箱 おまけ

眠たくてむずがるねねをあやす卓の腕の中にそれを添えてやると、それまでのぐずぐずが嘘のようにおとなしくなった。もちもちとそれをしばらくいじったのち、ねねはすとんと眠りにつく。息を詰めてそうっとベビーベッドに寝かせ、規則正しい寝息を確認すること数十秒。ようやくほっと一息をつき、卓は、ねねがぎゅっと握ったまま離そうとしないうさぎのぬいぐるみをまじまじと眺めた

「……なんかこれ見たことあるな」
「そう? ねねの一番のお気に入りだからかしら。ぐずってるときはこの子の出番」
「へえ」
「…………」

それはいつだったか、未来の卓に会いに行くつもりが過去に行ってしまい、まだ小さなころの卓としばらく話した、その帰りすがらのことだ。膝にのせていたぬいぐるみたちをおもちゃ箱に戻すココの手を、卓少年はふと押しとどめた

『その子、おねえちゃんにあげるよ』
『え!? だ、だめよそんな。いただけないわ、だって……!』
『いいの! おねえちゃんががんばるときのおまもりにして!』
『……。ありがとう……』

その子というのが、件のうさぎのぬいぐるみだ

いまにして思うと、過去の世界にあるものを現実の世界に持ってきてしまうというのは、あまりといえばあまりな暴挙ではなかったか
とはいえ、自分からもらったわけではないし、いまここにあるものを過去に遡って取り去ってきたとかいうわけではないから、辻褄が合う合わないはあまり問題なさそうだし……と、いろいろ逃げ道を考えてはみたが、やはりそれは後付けでしかない。単純に、嬉しかった。だからもらってきた。それだけ。だからといって大っぴらに飾っておくのも何なので、棚にひっそりと座らせておいたのを、あるときねねがピンポイントで指さしたときには流石に面食らった。やっぱり親子……何か引き寄せられるものがあったのだろうか

「……手ざわりで癒されるとかそういうやつなのかな」

と、先代の持ち主はちょいちょいとうさぎをつつく。その感触が意外と気に入ったらしく、しばらくいじり続けていた。すると、ねねが寝返りを打ちながらそれを引きよせ、ぎゅっと抱え込んでしまった

「そうねえ。わたしにとってはどちらかというと、奮起させられる感じだけど」
「え、どういうこと」
「ふふ」

大切な思い出は、いまでも箱の中にある