ゆったりとした時が流れる平和な土曜日の午後、
俊は蘭世の部屋に呼び出された。





「江藤、入るぞ」
「は―――い」
「なんだ、用って……うわ!?」

ちんまり。
そんな表現が似合う少女が、何故か呼び出した蘭世の代わりに
ベッドに行儀よく座っている。
???
見たことのある、というかついさっき確実に見たこの服装……

「おま……江、藤……か?」

ぱあっっ、と少女が満面の笑みになる。

「そう、で―――す! 小さくなってみました―――。
きゃあ、すごーい。判ってくれるなんて! 一度見たよね。そういえば。地下の鏡! 
あれで、とりあえず7歳に設定してみたの。……どう??」
「……どう、って……」

……可愛い。
なんて、言えるか。

「まあ、たまにはお遊びも、いいんじゃねえの?」
「んふふ―――」

本当の子供のように無邪気に笑う蘭世を横目に
頭をぽりぽりぽり……はあ。

用って、これかよ……
たく、暇なんだなこいつ……
つんつん。
いや、べつに平和なんだし何かしなきゃいけないことも
ないんだし、いいんだけど……
つんつんつん。

「〜〜〜うるせえなっっ! 何だよっ」

更に無反応だったら今度はくすぐってやろうと思っていた
手つきを、踊ってごまかしながら蘭世が甘える。

「ねえ、だっこだっこー。」
「はあ!?」

俊の返事も待たずに、蘭世は俊の膝に勝手に乗り込む。
ぴと。胸に頬をおしつけ腕を背に回す。

「……軽いな」
「でしょ?」

小さすぎて、腕が背に回りきらない。
まるで大木にしがみつくコアラ。



「……髪は、長いままなんだな」

俊は蘭世の輝きが増した髪を一房指に絡めてみる。

「あー、小さい頃から伸ばしてたから……。
髪質は戻ってるでしょう? 痛みとか、なくなってる。
ぼろぼろになっちゃってた先っぽのキューティクルちゃんがほら、復活―――♪」

そういえば。
一本一本がなめらかに指の間を滑り落ちていく。

「エヘヘ。手も、こんなに違うよー。」

と、蘭世は俊の手のひらに自分の手のひらをあわせる。
明らかに2倍はある自分の手。

「一足お先に娘をもった気持ちになったりしない?」
「ぶっっ」

思わず咳き込む。恋人にいきなり娘になられてたまるか。

……恋人。
自分で自分の思った単語に過剰反応してしまう。
俊は蘭世の背中に自分の手を静かにまわす。

「あ〜あ、子供に戻りたいなあ。」

どっき―――――ん! そんな漫画のような音が頭で響いた気がした。
焦って腕をベッドに戻し、自分の身体を支える体勢にする。

「な……なんで」
「ん〜〜〜? ずっとこのままでいて、真壁くんに可愛がってもらおうかなって〜」

……可愛がって…………。

「だ……駄目だ馬鹿!! 早く戻れ!!」
「え〜〜〜なんで〜〜〜」

見た目が流石に犯罪なんだよ。


肩に少女(中身はじきハタチ)を担ぎ上げて地下へと急ぐ
真壁俊(見た目もじきハタチ)であった。