久しぶりに学校に居残りしてしまった。
……補習で……。
別に、進学する予定はない二人なのだが
直近の試験が、散々だったのだ。
「うお───、腹減った───!!」
校門を出るより早く伸びをして叫ぶ俊。思わず顔がほころぶ。
「そうだねえ、結構残されちゃったし」
時計を見ると、すでに19時を回ってしまっている。
つきあってくれる教師の根性も見上げたものだ。
「……おまえんち、今日、飯あるか?」
「へ? うーん……朝、遅くなるってこと言っておいたから
準備してくれてないと思うけど……どうして?
あ、真壁くんの分も作るよう連絡しておこうか?」
「……じゃ、なくて」
「?」
「……食っていかねーか」
俊の足は返事も聞かずにいつもの道の一本前の曲がり角を曲がった。
「あ、ラーメン二つ。大盛りで」
「え、あの……」
暖簾をくぐりずかずか入っていってしまう俊に
ついていき、隣に座る。
「……うまいぜ、ここ」
受け取ったお冷やを蘭世の前に置き、週刊誌を読み出す俊。
あまり一人では踏み込んだことのない店の雰囲気に
落ち着かずきょろきょろ見回しながら、蘭世はそれを一口飲み込んだ。
「……よく、来るの?」
「ひとりのときはな」
「そうだよ〜! いっつも一人だから心配してたんだよ。
男前なのに、彼女のひとりやふたりいないのかってね! それが
こんなかわいい子かくしてたなんてねえ!!」
お店のオヤジさんが丼を二つ目の前に置きながら笑う。
「…………」
カノジョ……。
「いや、いろいろと入りづらいとかあるんじゃないかと思って」
箸を二膳抜き出し、一膳を差し出す。
ずるずる吸い込んじゃってよいものか。一瞬迷ったが
速攻で食べ始めている相手をほんの少しながめてから
同じように遠慮なく吸い込む。
こういうのって、なんだか真壁くんの領域に踏み込めたみたいで……
ちょっと、うれしい。
「もう、食わねえの?」
三分の一くらい麺が残っている丼を覗き込み俊が言う。
「うん……ここ、多いねえ。もうお腹いっぱい」
「じゃ、食うぞ」
と、丼を手にかけるのをあわてて制止する。
「だ……だめっっ!! 食べ残しなんて!! 新しいのもうひとつ頼んでよう!!」
「はあ? いくらなんでもそんなに食えねえよ」
そうだった。彼も大盛りを一杯平らげていた。
「で、でも私、麺の途中で噛み切っちゃったりしてるし……」
「くだらねえこと気にするなあ。勿体ねえだろ。食えるほうが食えばいいんだよっっ」
というが早いか、奪って、完食。
……相手が足りないことでも、こうやってお互い補っていけばいいんだよ。
俊としては、精一杯のメッセージのつもりだったのだが、
当の本人は、うわあ、オトコノコの食欲……と、ポ────っと眺めているだけだった。