あ、寝てる…
蘭世は、左斜め後ろ、三列向こうの席を
ちらりと見て笑った
今は、授業中
六限だから、もうちょっと我慢すれば
帰れるというのに
俊は、遠い遠い夢の世界に旅立とうとしていた
肘をつき支えた頭が、かくんかくん揺れている
うーん、今日のとこ、試験にでるらしいんだけどなー……
かくいう蘭世もうわの空
今夜の夕飯には何を作ってあげようか
おとといはカレーだったし、その前は…と
教科書のかわりに、すっかり豊富になったレシピを
頭の中でぺらぺらとめくっていた
判ってるかなあ、真壁くん
自分で言うのもなんだけど
私、すっごくお料理上手になったのよ
もともと、そういうのは嫌いじゃないから
おかあさんのお手伝いはよくしたし
そのおかげってのも勿論あるけど
やっぱり
真壁くんにおいしいって食べてもらいたい
って気持ちは何よりも
がんばるチカラに繋がってると思うの
蘭世はもう一度
その人の方を振り向いてみる
さっきまではまだ
起きなければという気力が見て取れるうたた寝だったのが
今はしっかりと同じ姿勢にかたまって
熟睡モードへと変貌を遂げていた
いろいろチカラをありがとう
───料理だけじゃ、なくてね
くすりと蘭世は笑い
再び夕餉の仕度に思いを馳せる