師も走る十二月は文字通り風のように過ぎ去って、新しい年の幕開け
ロマンチックというかお約束というか、クリスマスのその日に白く彩られた街は
解ける日を経ることなく、ふたたび、雪の厚すぎるほどの化粧をほどこされて
いつもよりほんの少し早く目を覚ました蘭世が
毛布ぐるぐる巻きの姿で布団から這い出て、窓の桟に手を掛け外を覗き込んだ頃には
ブロック塀のてっぺんに、おとつい払ったはずの雪が再びこんもりと積もっていた
「あ───……。ゆうべは大分冷えこんだから、なあ……」
この部屋には、エアコンなんて超ハイテクなものはなく
申し訳ていどにあるのは、ごく小さなセラミックヒーターのみで
もちろん、タイマーセットなんて画期的な機能もついていないから、寝るときには電源オフ
結果、一晩のうちに冷えてしまった部屋を、人がまともに活動できる温度に戻すべく
蘭世はスイッチに手を伸ばす
「う〜〜〜〜〜、寒いっ」
雪が降るのは構わないが、この寒さばかりはいかんともしがたい
思わずため息まじりの声が漏れる
その声に呼応したのか、はたまた本能的なものなのか
ぶつぶつと何かを唱えながら、頭までかぶっている布団から手だけを差し出して
ついさっきまで蘭世の横たわっていたあたりの布団をもさもさとさすり
何も手に触れるものがない───蘭世がいない───ことに気づいた俊が
今度はしっかりと頭を布団から出し、ゆっくりとあたりを伺って
流れ出る温風に手をかざした姿勢の蘭世に気づく
「……早いな」
「あっ。ご…ごめんね、起こしちゃった?」
「いや……」
早いといっても、枕元の時計が指すのは朝と呼ぶには遅すぎる時間帯
カーテンの隙間から差し込むやけに明るい光に、少しうろたえながら俊は
寝ぼけまなこをこすりながらむっくりと起き上がる
「……眩しいよね───……。ゆうべ、雪が降ってたみたい」
「ああ、道理で……」
積もった雪に反射した日光は、案外手ごわく、電気を点けずとも部屋は十分明るい
その明るさに目が追いつかず、起き上がったままの姿勢でぼうっとしている俊の傍らにちょこちょこと舞い戻り
なぜか正座で腰をおろし、深々と頭を下げる蘭世
「───うん?」
「えへへ……
あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「え? あ……お、おめ………」
「えへへ。ごめんね、こんな格好で……。あっ」
“こんな格好”なのはお互い様。俊は俊で昨夜(今朝)の余韻のもと背中はもろ出しで
少しずつ部屋も暖まりつつあるとはいえ、流石にその姿は辛いものがあり
意識がはっきりしてくるのに従い、寒さもはっきりと感じられてくる
それを悟ってなのかどうなのか、蘭世は脱ぎ散らかした衣服を漁り
パジャマの上着を見つけて俊に差し出す
「──────はい。起きるなら、風邪ひいちゃわないうちに……」
「…………」
言っていることは至極もっともなことの筈なのに
もこもこの毛布から、細い腕だけ出している姿が、なんだかおかしくて
「………や、まだ……起きない」
「あ、寝るの? ……って、え? ひゃあっ!?」
毛布の上から抱きしめて、そのままぐいっとのしかかる
ぐるぐるに巻かれた毛布の入り口を手探りで探し当て、少しずつ解いていく
肌と肌がぴったりと重なりこすれあう心地よさを感じながら、脚と脚との間にもそもそと腕を差し入れ
曲げさせた膝を押し開く
「や……あ、あの、真壁くんっ! な、なに……」
どこでどうしてスイッチが入ったのか、当の蘭世にしてみればちっとも計り知れず
がっちりと押さえ込まれた隙間から、ちたぱたと手足を振って抗議する
首筋に埋めていた顔をふと持ち上げ俊は、見る見るうちに真っ赤になっていく蘭世の頬を一瞥して
にやりと笑う
「なにって……年の初めの参拝を………」
「!! 〜〜〜〜ばかっっ」
──────年は明けても、あいもかわらず