「───あっ」
「うん?」
「天の川、見れるかなっ」
彬水の胸に耳をぴったりとつけ、うたたねしていた愛良が
思いついたかのように目を覚まし、カーテンへにゅっと手を伸ばす
そういえば今日は七夕だ
“星”ではなく、わざわざ“天の川”という単語が使われたことで
彬水はようやくその事実に気づいた
それほどしつこく攻め入ったつもりはなかったのだが
実際にはかなりの時間を費やしていたらしく、外はもう真っ暗
はかったかのように今日はいちにち晴れていたし、例の二人の逢瀬も
滞りなく執り行われているに違いない
星を見上げるのは、嫌いではない。むしろ好きなほうだ
どの星がどの星座を織り成しているのかもだいたい把握している
けれど正直なところ、例の二人の恋路がどうなろうと、今の自分にはどうでもよいことだった
それよりもずっと見ていたいものが腕の中にあるのだから
横たわる彬水の背にある大きな窓を、愛良は彬水の身体越しに眺めていた
その顔の真ん前ににゅっと顔を突き出してみる
「ふわ! な、なんでこっち見るのっ」
「なんで、って」
「星……すごいキレイだよっ。新庄さんも見ようよ」
「いや…………。星見てるよりもおまえ見てるほうが面白いし」
「うわ! ちょ───失礼!!」
夜空に美しく輝く綺羅星を眺めるよりも
ぐるぐるとめまぐるしく色を変える愛良の表情を、一瞬たりとも取りこぼすことのないよう
しっかりと焼き付けることのほうが彬水にとっては重要課題なのだ
「もう〜〜〜〜〜! 新庄さん、ジャマっ!!」
「フン」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ」
「…………………」
「あ」
窓と自分の間で目線を塞ぐ彬水の顔をよけ、なおも外を見ようとする愛良の顔の動きに合わせ
ゆらゆらと顔を動かし、それを邪魔すること五往復
業を煮やし、彬水の頭を力づくで枕に押さえつけようとした腕を、そうさせてなるものかと掴み
ついでにぐいっと引き寄せ、その唇を奪った
抵抗しようとした腕の力がすうっと抜け、おとなしくなる
それを見計らい彬水は愛良の頬に手をやり、髪に指先を差し入れ───そのまま背の中心あたりまでを撫でた
膝立ちの四つん這いで浮いている腰に手を沿え、ゆっくりと抱きとめる
唇を離すと、一瞬で真っ赤に染まった頬を押さえながら愛良が呟いた
「……………い、いきなり…えっちなキスした………」
「当然」
それどころか
星を見る余裕なんてないようなことを再び為すつもりなのだけど
そう口にしたら、どんな顔をするだろう
下手に長く見つめていたら吸い込まれてしまいそうなこの目は、ますます大きく見開かれて
真ん中に映る自分の姿を揺らすのだろうか
言葉も大切だけれど、ここ一番は態度で。そしてなにより、これ以上平常心を保つ余裕はない
彬水は自分自身の貪欲さに内心舌を出しつつ、愛良を抱き寄せる手に力を込めた