俊蘭SSSまとめ
230520-02(230413)[P:230417]
「相性問題」っぽい話・蘭世さんver.
「わたしじゃ……だめですか」
自分たちを取り巻く得体のしれない渦の中で、それから庇うあたたかい腕に抱き留められていたら思わず口に出ていた
それはごうごうと耳障りな音に紛れて消えることはなく彼の耳に捉えられ、流れていくべき先をずっと探していた彼の目線がこちらに移る
彼は、「むこうの彼」とはなにもかも違う
気を抜いたら目の奥に潜む強さに射抜かれそうになる
「もしかしたら、こっちの蘭世さんがむこうにいてくれたら、そのうちこの歪みも解決するかもしれない……」
「…………」
「……か、顔も体も一緒だし……その」
その目と目を合わせたまま言葉を継ぐことはできなかった
こちらの胸のうちをも見透かすような、鋭い眼光は変わらず、彼の心が1ミリも動いていないことは明白だったから
「……勘違いしないでもらいたいのだが」
うねる渦に引き込まれない程度に腕の力を緩め、彼は小さくためいきをついた
「おれの最優先事項はあいつを無事に連れ帰ることだ。世界のおかしな歪みを直すべきとは言ったが、それはあくまで二の次三の次。ましてや、あんたがいま悩んでることは、夫婦間の揉めごとなんだから、夫婦間で解決してくれ。おれを逃げ道にするな」
「逃げ道だなんて……!」
「第一、『顔も体も一緒だから』なんて、元の世界の発想と変わらないことを言うんだな」
「あっ…………」
目の前がぐらりと揺れた気がしたのは渦のせいではない
「……理不尽なルールに縛られていたことは同情するが、『そんなルールにとらわれていたわたしって可哀想』だけで止まってたら何も解決しないだろう。そう思うのも嫌で飛び出してきたんじゃないのか」
「…………」
彼は「逃げてきた」とは言わなかった
受け入れてはくれなかったけれど、分かってくれているような気がした
「気を取り直して……いくぞ」
「はい……」
彼はなにかに呼ばれたかのようにいったん頭上を確認して、首をひねって、渦に向かうもう一歩を踏み出した
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それから・「彼だ!!」のシーンで、真壁くんと鏡の蘭世さんが喋ってるような感じに見えませんか? その時の会話を想像して書きました。真壁くん誕生日のweb拍手におまけテキストとして載せていたのですが、誕生日に載せる話ではないな……
230520-01[P:230417]
「事情」プロポーズの次の年の真壁くんの誕生日どうするか迷う蘭世さんとめんどくさくなったサリさん
「俊くんの誕生日、ねえ……」
「うん……なにも言ってくれないから困ってるの。なにかいいアイデアあるかな?」
「そうねえ……。逆に、蘭世の誕生日はどうだったの? あ、婚約記念日か(笑)」
「あ───……ははっ。あの日はわたしのほうからお願い、して……」
「ふむふむ………」
「……というわけ、なのよ」
「はあ……」
「?」
「蘭世ってば……あなたホントすごいわ……」
「へ? なにが??」
「いや、その……。あのね、『手料理食べたい』『彼の部屋で』って……
とどのつまりは『わたしを料理して』って意味だったんではなく?」
「ええっ!? ち、違うわよっっ」
「えっ違うの!? 嘘でしょ!? ……ああ、その天然さがもうなんていうか……
俊くんもこれまでよく我慢できたもんだわ」
「が、我慢って……」
「ていうか……蘭世がお泊まりしてくって言わなかったら、
そのまま送るつもりだったのよね? 俊くん」
「うん……家に着いたら、きちんとプロポーズしてくれるつもりだった、って言ってた……」
「そっかー。もう……大事にされてるわよねえ」
「…………っ。それは、そう……思う……」
「そしたら! 俊くんの誕生日は、蘭世が新居で手料理作るってことにして
『わたしを食べて(はあと)』の新妻アタックで決まり! はい、解散!」
「サリってば……。真面目に考えてよう~~」
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web拍手に大昔につけていたおまけです。『そのころは順当にいけば新婚旅行中ですね(意訳)』というツッコミをいただき、確かに! と思いました……