それに気づいたのはほんの偶然。
真壁家では午後のティータイム。俊はコーヒーで蘭世はミルクティ。
手作りのちょっとしたお菓子なんかをつまんでいる時のこと。

「!! おい、おまえ……」
「ん? なあに??」

リビングにある大きな姿見。それに映るのは、
遊びつかれてすやすや眠る卓と、
コーヒーカップを傾けたまま呆然とした自分と
……あとは、家具。

「お、まえ……。映ってねえぞ」
「へ? ……あれ、気づいてなかったの?」

当然のことのように応える蘭世。こくんとミルクティを一口飲み込み続ける。

「あなたや卓は、能力が強いからそうじゃないかもしれないけど、魔界人って、人間界製のモノには弱いのよ。
鏡だけじゃなくて……そうね、カメラとか、あと、声も録音とかできないかも」
「そう……なのか?」
「実家にあったのはみんな魔界製だったからよかったけど、うちのはみんな、人間界のものでしょ。
だから、すごく疲れてる時とか、今みたいに、リラックスして気を抜いちゃってる時とかは
わたし、映ってないわよ。いつも」

……知らなかった。

「だから……」

鏡の方に近づき、腕を広げてみる。

「こんなに近くにきても、ほら、映ってない♪」
「……ふーん……」

その後ろに立ってみると、鏡と俊の間には何もないかのように、
普通に、俊だけが映る。
そのまま、俊は蘭世の肩に腕を回し、後ろから抱きしめてみた。

「あれ」
「……あ」

その瞬間、蘭世が突然鏡に映る。

「おまえ……。今はリラックスできてないってことなのかよ。失礼なやつだな」
「!! ち、違う……くもないけど、違うっっ」

ぶんぶんぶん。かぶりを振って否定。

「んじゃ、なんだよ? うわ……なんかすげえショックだ、おれ」
「もう〜〜。違うんだってばあ……。ほら、消えた!!」

すうっと、蘭世の姿が鏡から消える。
空気を抱えた格好になっている自分の姿が、なんだか妙な感じ。

「……どういうことだよ……」
「だから〜〜。今は、リラックスしてるのっっ」

よく判らない目の前の現実を見ながら、俊はあることを思い出していた。

「……おい。寝室の鏡って……人間界で買ったやつだよな」
「え?……う、うん」
「あの鏡に、寝てる時も映ってるぞおまえ! 絶対!!」
「〜〜〜もう〜〜〜。いいじゃないそんなこと!!」
「よくねえって」

肩にまわす腕の力を強め、羽交い絞めにする。

「いたいいたいいたいっっいたいってばっっ。」
「ほら、言ってみろって」
「う〜〜〜。い、言います〜〜〜」
「よし」

ふと、力をゆるめる。すり抜けられない程度に。

「だから、ね……」
「ん?」

蘭世はひとつためいきをつき、ぽつりと言った。

「あなたに触れられる瞬間……ドキドキするの。いまだに」
「……は?」
「リラックスしてない、っていうんじゃなくって……。緊張感、なんだわきっと」
「……寝てる時もかよ」
「それは、いつ触られてもいいように……。!!」

慌てて蘭世が口を押さえる。
一度戻った顔色がまた真っ赤。

「……それは……。いつも待ってるってことなのかよ……」

くっくっく。思わず苦笑してしまう俊。

「ち、ち、違うったらっっ!」
「悪いなあ、気づいてやれなくって……」
「ひゃっっ」

俊は、自分の膝を蘭世の膝の裏側に当て、そのまま大きく曲げた。
バランスを崩しそのままもたれて床に二人で座り込む。
再び腕に力をこめ、俊は蘭世の耳を軽く噛んだ。

「……ん」
「あ、映った」

鏡に映るのがそれと同時に二人になる。

「ふーん、おもしろい、かも」

「おもしろいって……!! あなたっっ」
俊は蘭世のロングスカートをたくしあげ、ショーツとストッキングを一気に引き抜いた。
そのまま、無理やり脚で脚を押さえ、大きくひらかせる。

「……丸見え」
「やだっっ!!」

それを隠そうとする手をつかみ、その人差し指を自らの秘部に触れさせる。

「……やっ……」
「やっぱり、まずいだろう、気を抜くと映らねえ、ってのは。
協力、してやるよ。遅ればせながら」

中央の突起を蘭世の指で弾かせる。
それに反応して身体がびくんと震える。

「……あ!」
「毎回、鏡の前でこういうことしてれば、
いつか身体が勝手に鏡を意識して、いつでも映るようになるさ」

指の付け根まですっぽりと収まってしまったそれの中心からこぼれる雫まではっきり見て取れる。

「や……あ。あな、た……っ。卓に、聞こえちゃう……っ」
「……ん? 音が?」

反応を楽しむように、指の動きを早める。

「……ひあっ……」
「……声も、か」

俊は蘭世を静かに横たえ、覆い被さってその口を塞いだ。

「子供はそう簡単に、起きねえよ」

蘭世の耳元でささやき、俊はさっきまで自らの指でさせていた行為を
改めて自分で繰り返しはじめた。丹念に、ゆっくりと。

勿論その日の夜までは蘭世が鏡から姿を消す事はなかったし、
俊の言うとおり、卓も「寝る子は育つ」とばかりにすやすやと眠りつづけていた。