ずっと黙り込んだままの俊。なんとなく話しかけちゃいけない気がして
ぺらぺらと、何度も読んだ雑誌をめくるだけの蘭世。
帰ってきたときから元気がなかった。最初はそれなりに微笑んでくれていたけれど
だんだん無表情になって、考え込んで……。
……そんなときはほっといてくれ。勝手に復活するから。
いつだったか言われた言葉どおり、黙ってそこにいる。
一人にしてくれとは言ってないから。
突然、思い出したかのように俊が言う。
「ちょっとつきあえ」
「え」
キーを片手に、蘭世の手をすこし強引に引き寄せる。
深夜の高速。
暗くて目にとまるものがない今夜、ネオンの流れは妙にゆっくりで。
耳障りなほどの車の警告音で、かろうじていつも通り、いやそれ以上、
車線を越えて他のどの車よりも先へと進んでいることに気づく。
多分、運転はとてもうまい人の部類に入るのだろう。
急ブレーキでガックン、なんて経験もないし。
余り乗らないせいか、酔いやすい体質の自分が
快適に乗っていられるドライブ。下手すると眠ってしまって。
きっと。口にすることはないだろうけれど。
蘭世は再びたずねてみる。
「……何か……あったの?」
「別に」
案の定即答。そして沈黙。
一つだけ小さくため息をついて、すぐまた真剣な表情に戻り
車を滑らせるその横顔に改めて恋に落ちる。
最近、こんな真剣な顔、見てなかったな……
心を許してくれてるのはとても嬉しいけれど。
でも今の真壁くん……とても、綺麗。
多分、わたしのほうがずっと好きね。
ひとつひとつの動作にこんなにどきどきしてるなんて。
もうちょっと、色んなことを話してくれればもっと嬉しいけれど。
こういうとき隣に置いていてくれるってだけで
今は十分。
I'll be the wind, the rain and the sunset
And lighten your door to show that you're home
ドライブ向きじゃないそのBGMにあわせて口ずさみ
蘭世は視線を再び窓の外に向ける。