きょうは、卓ちゃんのかよっているようちえんのうんどうかいです
ぱぱとままは、ままがいつもよりはやおきし、
はりきってつくったおべんとうをかかえてグラウンドへとやってきました

「ごめんなさい、おもかったでしょ〜。ちょっとつくりすぎちゃったかしら?」
「いや、だいじょうぶだろ。あとからおとうさんたちもみにきてくれるんだろ?」
「うん、ちょっとひざしがつよそうだけど、
おひるごろ、いっしょにおべんとうたべましょうっていっておいたから」
「そうか」

……と、すきをみてぱぱがままとてをつなごうとすると
ままがもういっぽうのてにもったかみぶくろから
ぴょこんとなにかがのぞいています

「……なんだこれ」
「え? ……ああv」

ままはにこにことそれをとりだしました
するとそれは、くまちゃんのぬいぐるみ

「卓ってば、くまちゃんにもみててほしいんですって
まだまだこどもよね。もうじきおにいちゃんになるっていうのにね……」
「……そうだな」

と、いとおしそうにじぶんのおなかをなでるまま
ぱぱのむねのおくでこつんとひっかかったぎもんも
そんなままのかおをみてしまうとすっとんでしまうのでした

ひとつめのきょうぎは、おおたまころがし
ぱぱは、おろしたてのビデオカメラをかまえ卓ちゃんのすがたをおいかけます

「たくく〜〜〜〜ん♪」

えんじたちのせきのほうからきこえてくるきいろいこえ
じつは卓ちゃんはようちえんじゅうのにんきものなのです

「きゃ♪ 卓ってばすご〜い! いっとうしょうじゃない」
「……あいつもなかなかやるな」
「ね、すごいね♪」
「いや、それもそうだけど……あいつへのおうえんが……」
「ああ……そりゃそうよ。だってあなたのこですもの♪」

そういってままはにっこりほほえみます

「…………」

そうだよな
おれのむすこなんだから、こいつにべったりになっちまっても
あるいみしかたねえはなしなんだよな
それなのにおれは、あいつにひつよういじょうにつらくあたっちまってたな……

「? どうしたの??」
「……あ、いや、なんでもねえ」

いままでのたいけつをかえりみて、すこしむねがいたむぱぱ
けれどもそんなことにままがきづくはずもありません

「うふふ、へんなあなた……
あ! つぎのきょうぎはわたしがとるから、あなたはゆっくりながめてね♪」
「いいって、べつに」
「いいから♪」

ままのめは、まあたらしいカメラをまっすぐにみて
きらきらかがやいています

「…………ひょっとして、いじりたいのか?」
「……エヘヘ……」
「わかったよ。……ほれ」

ぱぱはままにカメラをわたし、ボタンのせつめいをはじめます

「……ここがズームボタンで、ここがろくがボタン」
「うん♪」

きのせいか、なんだかさっきからしせんをかんじるぱぱ
きょろきょろっとまわりをみても
べつにこちらをうかがっているようなひともいないようなのですが……

「……どうしたの?」
「あ、いや、なんでも……(気のせいか……)で、ここをみながらかまえる、と」

こうきしんおうせいに、でもちょっとこわごわとカメラをかまえるまま
ぱぱはそのうしろにまわりこみ、だきしめるかっこうでままのてをとります

そのときです
ぱぱはふたたび、こんどはつよいいしをかんじました

「…………!」

いしきをしゅうちゅうして、そのつよいいしのもとをさがしてみると……

「…………。なあ。こいつ、卓がもってけっていったんだよな?」
「え? ああ、くまちゃんのこと?
そうなのよ。きのうのよる、キッチンにそのこをつれてきて
『あしたぜったいくまちゃんつれてきてね。くまちゃんにもみてほしいから』……って」
「……どうもあやしいとおもったんだ……」
「え?」

ままのといかけにはこたえず
じいっとくまちゃんをにらみつけるぱぱ

───おい! 卓! おまえ、このなかにいるんだろう!?

ぱぱは、テレパシーでくまちゃんにうったえかけます

───くそっ! なにが『くまちゃんにも見て欲しい』だ!
お前にそんなかわいげがあるかっつーの
あいつはだませても、俺はだまされねえぞ!! おい、こら返事しろ!

───……最初は気づかなかったくせに……
ちょっとだけ、ぼくの意思をくまちゃんに残しておいたんだよ〜だ
ぼくががんばってる間に、ままに手を出されるんじゃないかと心配だしね!

───そんな悪知恵、どっから習ってきた!?

───さあ? ぱぱの子供だからじゃない?

「〜〜〜〜〜〜!!」
「あ、あなた!? どうしちゃったの!?」

くまちゃんをかかえたままおもわずはぎしりしてしまったぱぱを
ままはあわててなだめます

「(……はっ!)あ、いやなんでもねえ……すまん」

と、われにかえりふとグラウンドのほうをみやると、めのまえに、なぜか卓ちゃんがたっていました

「うわ! お、おまえ、なんで……」
「あら〜卓〜♪ あなたさっきはすごかったわね〜! いっとうしょうだったじゃない!」
「うん! がんばってはしったら、いっとうだった!
ほら、これ。いっとうしょうのしょうひんなんだ♪」

卓ちゃんのジャージのそでぐちには
まっかなリボンがほこらしげにかざられています

「うわぁ〜……。やったじゃない!かっこいい♪」
「エヘヘ」
「……(エヘヘ、じゃねえよ!おまえ、なにしにきた!?)」

いくらじゃましたいからって、ようちえんじのれつからはなれてきちまうのはまずいだろ!?
そういいかけたぱぱのことばをふさぐように、卓ちゃんがいいました

「えっとね、つぎ、フォークダンスなんだよ
せんせいが、おとうさんかおかあさんをつれてきなさいって」

そういえば、まわりをみるとほかのえんじたちも
それぞれのふけいのもとに、むかえにきています

「ね、まま。ぼくといっしょにおどりにいこう♪」
「あらあら……卓ってば。そんないいかたされたら、まま、ドキドキしちゃうなあ〜」
「…………」

そんないっせだいまえのナンパのようなセリフを
いつものようにせいししたいのもやまやまなのですが
もし、せいししたとして

……じゃあ、おれがおどるってのか……?

ふけいとえんじのあいだにまざり
じぶん(と卓ちゃん)がフォークダンスをおどるなどと
そうぞうしただけでぱぱはクラクラします

「……そうだな、おまえ、いってこいよ」
「♪」

ぱぱはこんかいばかりはあきらめてしろはたせんげん
もちろんぱぱがそういうであろうことをしっていた卓ちゃんのかおが
にやりとかちほこったほほえみにかわります

──────が

「もう、あなたまでわすれちゃったの?  
 ごめんね卓、ままはちょっとむりなのよ」
「は!?」

ぱぱと卓ちゃんは、どうじにままのほうをふりむきます

「やだ、ふたりとも、すごいかお……
卓、あのね、ままのおなかにはいまあかちゃんがいるってこないだおしえたわよね?
でね、ままがダンスとかしちゃうと、おなかのなかのあかちゃんが、びっくりしちゃうのよ
だから、ごめんね? ままはちょっとムリなの……」
「…………」
「だから、こんかいは、ぱぱとおどってらっしゃい♪」
「ええ!?」
「はあ!? なんでおれが……!!」

あせるふたりをしりめに、にこにこしながらままはつづけます

「なんでって……。だからさっきカメラのつかいかたおそわったんじゃない♪
ふたりのなかのいいすがたは、ままがしっかりろくがしておくから
あんしんして、こころおきなくおどってきてね、ふたりとも♪」
「…………」

まわりのざわめきとはうらはらに、しーん、としてしまったふたりのこころをしってかしらずか
グラウンドに、げんきなよびかけがひびきわたります

『次は、父兄参加のフォークダンスです
ご父兄の方々は、迎えに来たお子さんといっしょに
グラウンドの中心までお集まりください……』