車です
私はこのたび、プロボクサーの真壁俊とかいう男に買取られました
小生意気なことに、この男は今デート中なのです
相手は、色白で笑顔がかわいらしく髪のきれいな娘さん
若い二人同士、さぞラブラブなのだろうと思いきや、
彼女は私を見るなり、私の体を、無邪気な笑顔で撫で回したのです!
そして、私に乗り込むときにも、やっぱり無邪気な笑顔で
「よろしくね、車さん♪」と囁いたのです!
これが私への恋心でなくて一体何なのでしょう!?
……ああ、私は大きな罪を犯してしまいました……
この私の美貌が、ひとりの純粋な乙女のハートを釘付けにしてしまった……
しかし私は車、彼女は人間……所詮道ならぬ恋というものです
また幸いにも真壁俊は、そんな彼女の心変わりに全く気づいていない様子
まあ、彼女の家に続く道を曲がる前に
ところどころに折り目のついた情報誌を
何度も読み返す等、いいところもある奴のようですし
きっと彼女のことを幸せにしてくれるでしょう
娘さん、私のことなど忘れて
かわりに真壁俊に幸せにしてもらいなさい
その日が来るまで私は
娘さんのためにだけ走りましょう……!!
その後ずっと俊の乗用車は
蘭世とのデートの時にはスイスイと走ったが
俊が一人で走るときには
何となく調子が悪かったという