今日もテレビでは俊の大好きなボクシング
そしてやっぱり今日も俊は
子供のように夢中になって観ている
……のはいいのだけれど
そろそろおなかが空いてきちゃったな

さっきからさりげなく念を送っているのだけれど
今日は聞こえてないみたい
「真壁くん」
「……ん?」
ふりむきもしないでやっぱり生返事
「お腹、空かない?」
「…………ん……」

むむむ
その「ん」はどっちなの??

「晩ごはん……なんだけど
なんか食べたいものある?」
「………ん……」

むむむむむ
その「ん」はどう受け取ればいいわけ??

「…………。あのね、真壁くん。わたし、今日絶対作りたいメニューがあるんだけど、聞いてくれる?」
「……ん……」
「まず、にんじんと玉ねぎとじゃがいもを炒めるのね」
「ん……」
「で、そこに生クリームと牛乳を足して」
「……ん…」
「仕上げはチョコレート。甘味がいい感じなんだ」
「うん……」
「で、ごはんにひき肉のそぼろをかけて」
「……ん……」
「付け合せに納豆! ここにもお砂糖入れるの。たっぷり」
「……ん……」
「で、さっきのスープにごま油をひとたらしして、ごはんにかけてできあがり
どう、おいしそうでしょ?」
「……ん……」
「…………」

 

そして、晩ごはんどき
「……江藤……」
「え? なあに?」
「……いや……作ってもらっておいて何なんだが……この料理はいったい……」
「真壁くんがさっきおいしそうって言ってたんでしょ?」
「さっきって……」

俊の目の前には、にこにこと極上の微笑を浮かべ肘をつき俊を眺める蘭世
そして卓袱台の上には、蘭世がご丁寧にレシピを読み上げた料理(?)
それらふたつがあり、俊の動向を伺っている

「さあ、召し上がれ♪」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

がばっっ!!
うなされて起きると、そこはいつもの俊の部屋。変な料理(?)もない

「…………」

ほっと胸をなでおろし、そしてこれからはふたりのときにはあまりテレビに夢中にならないよう固く心に誓った俊であった