色々100のお題 Type3 01:始まりの予感
「―――よし、っと」
壁にかけられた姿見の前に立ち、セーラー襟を正しながら蘭世は大きく頷いた
下ろしたての制服の、ぱりっと新しい香りに、自然と背筋が伸びる
「忘れ物はない?」
いつの間にか隣に立っていた椎羅が問いかける
「うん。昨日の夜と、今朝も確認したから大丈夫……だと思う」
と、いいつつ蘭世は今一度鞄の中を覗いてみた
もっとも初日なのだから、筆記用具程度しか必要ないといえばないのであるが
その間に、見送ると行っていた鈴世だけでなく、朝は苦手な筈の望里までが起き出してきていた
「おねえちゃん、気をつけてね」
「ありがとう。じゃあ…いってきます」
ひらひらと手を振り、蘭世は外へと一歩踏み出す
今日から学校へ通うことになった
これまでは、勉強はもちろんのこと、生活のほとんどをこの家のなかで済ませていたのが、朝に晩にねだり続けた熱意が実り、念願かなっての方針転換
魔界・人間界の差はあれど、ある程度「世間」というものを知るもよしと判断したがゆえのことだったのだが
そんな両親の考えにまで思いを馳せることは、蘭世にはまだ至難の業
それでもやはり心配する両親を宥めつつ、自分を羨む弟を慰めつつ、次々と整えられる通学用品に心躍らせるのがせいぜい関の山だった
通りをしばらく歩いて振り返ると、玄関で見送ってくれたはずの家族は門の外まで出ていて、こちらの様子を窺っていた
新しいもの。まだ見ぬ、色とりどりの世界
不安がないわけではないけれど、好奇心がそれより遥かに上回る
加えて。青く澄み渡る空に、やさしく吹き抜ける風。はじまりの日がこんな日であるならば、悪いことなど起こる気がしない
その場でくるりとターン。風に踊る髪とスカートを楽しみながら、蘭世はもう一度大きく手を振った