色々100のお題 Type3 15:手を伸ばせば、すぐ其処に / おまけ

自分はもしかしたら、とんでもなく間の悪い男なのかもしれない
おぼろげに感じていたその疑念は、ただいまこの瞬間、確信に変わった





朝から張り切って出掛けていった姉と、その恋人
顔を合わせるどころか、話すこと自体が久しぶりだと言っていたから、さぞやお楽しみなのだろうという目測に違わず、そこそこに遅い時間の帰宅

なんとなく窓の外を覗いたのはまったくの偶然だが、わざわざ外へ降りていったのが、はたして意図的ではなかったかと問われると返答に困る。ただし、門の前で長々と別れを惜しんでいるっぽいふたりを、面白おかしくひやかしてやろう―――そんな軽い気持ちだったのだ。それがよもや、こんな状況に出くわすはめになるなんて

足音を忍ばせて走り、門につく。それまでの間にふたりの儀式は始まっていて ふと顔を上げた彼と、思わず目を覆ったその指と指のすきまから、姉の後頭部越しにバッチリ目が合った

姉と彼とのそういうシーンを見るのは、今日がはじめてというわけではない
けれどもこんな、うっとり恍惚とした彼の表情を目の当たりにしたのははじめてだ
あまりにも軽率だった自分の行動を、心の底から後悔した
だってあれは、恋人同士でしか、すなわち姉にしか見せちゃいけない顔ではないか





瞬時に煮上がり、光の速さで駆けて行った彼を見送る姉の後ろで、おなじく彼を見送る
ぼくなにも見てないから! なにも言わないから! ―――と、せめてもの念を送ってみるが、いまの彼に届いたかは分からない

そして。余韻に浸りながら振り返った姉の満面の笑みが、驚愕の表情ののち凍りつき、悲鳴のように自分の名を呼ぶ声がご近所界隈に響き渡った瞬間、あまりにも軽率すぎた自分の行動を、鈴世は、心の底から、つくづく、ことごとく後悔した