梅雨が明けるか明けないかのこの時期、傘も持たずに家を出たのはあまりに迂闊すぎたということだろう
突然降り始めたどしゃぶりの雨の中をふたりは走っていた
「あ……あそこ!」
「!」
蘭世が指差したのはコンビニの軒先。ばしゃばしゃと水しぶきを跳ね上げながら駆け込む
この日のために張り切って下ろしたミュールも雨でぐちゃぐちゃ
ぎゅっと絞れば水がこぼれてくるのではないかというくらいに濡れたワンピースが
ぺったりと身体に絡みつき、重苦しくさえ感じられた
隣に立つ彼は、額に貼りついた髪をいまいましそうにかきあげる
バッグから急いでハンカチを取り出し手渡すと、一瞬ぎょっとした顔で蘭世を見て
羽織っていたシャツをおもむろに脱ぎ、蘭世の頭からばさっと被せた
「ひゃっ」
「表は濡れてるけど、中までは染みてねえから大丈夫だろ」
「え……………っわ」
手渡されたハンカチで蘭世の頬を拭いながら、彼は中に着ていたTシャツの裾を引っ張り出し顔を拭う
どうしていいか判らず、ただおろおろと蘭世はその姿を眺めていた
「ま、真壁くん……これ、その………なんで………」
「なんでって………」
シャツをもてあまし気味に尋ねた蘭世を一瞥し、彼はぐっと言葉に詰まる
「…………目のやり場に困る」
やっと言葉をしぼり出してはみたものの、正確には
こんなところでその気になるわけにもいかないので、半分は言葉のとおりなのだけれど
こんなところでそんな姿で突っ立たせておいてたまるかというのが本当のところ
「や……やだっ! ご、ごめ…………っっ」
「……………」
耳まで真っ赤になりながら蘭世は、頭から被ったシャツの合わせ目を手繰り寄せる
彼は彼で、それでも足りないような気がして、包み込むようにその身を引き寄せた
雨の勢いはいまだとどまることを知らず降り続ける
『今日は梅雨の中休み。久しぶりに気持ちのよい晴れ間が覗くでしょう』
そんな甘い台詞とお天気お姉さんの微笑みに、まんまとのせられてしまったことを
ふたりそろって心から後悔した