「〇〇の魔法」あれこれ

「〇〇の魔法」をテーマに書いた小ネタをまとめて載せています。



心がときめくあれ



基本的に宿の部屋割りは女子二人で一部屋・男子すなわち俺一人で一部屋。その都度取れた部屋のうち、広めの部屋を女子部屋とするのが暗黙の了解となっている。必然的に、いまこの瞬間のように、夜寝るとき以外は女子部屋でそろって過ごすこととなる
女子なのに……とかいうと怒られそうだが、いつ来てもだいたい部屋は散らかっている。主に、いや全面的にフリーレンの荷物で。それをなぜかフェルンがせっせと片づけているのが毎度毎度の風景だった

「片づけしなくても部屋がきれいになる魔法とかないの?」
「あるけど」
「じゃあ使えばいいじゃん」
「散らかってるものをどこかに消すだけだから、たぶん戻ってこないよ」
「……ごめん確認なんだけど、俺、そんな物騒な質問した?」
「シュタルク様、お暇そうでなによりですね。片付けのお手伝いをするか、その『どこか』に片付けられるか、いますぐ選んでください」
「いきなりキレるのやめて!? ていうかフリーレンは!?」
「戦力外です」
「あ、うん……そうだね……」
「ごめんて」

いちおう戦力と捉えられていることを喜ぶべきなのか……? 比較対象がアレすぎるのでなんだか良くわからないままとりあえず俺は箒を構えた








すこしふしぎなあれ



今日も今日とて路銀(と魔法収集)のために討伐依頼をさくっと消化する。フェルンが財布に報酬の金貨をしまうその傍らで、フリーレンはもうひとつの報酬・魔導書を鞄に納めるのに手こずっていた。なんとなくその中身を覗き込んでみたら、禍々しい何かがカオス状態で詰め込まれていて、俺はドン引きした

「そんなに何入ってんだよ……うわ、鞄パンパンじゃんこれ」
「気がついたら何か買ってるし、そのへんから拾ってくるしで、どんどん荷物が増えちゃうんですよ、もう」
「ごめんて」
「……重っ! なんだこれ!?」
「ごめんて……」

呆れ顔ながらもなんだかんだで甲斐甲斐しいフェルンと二人がかりで鞄の蓋を押さえつけ、無理やり留め金をはめこむ。そのままなんの気無しに持ち上げてみると、想定外の重さに肩がやられそうになった。いつも涼しい顔して持ち歩いているのにどういうことなんだよ。地味にフェルンも力持ちだけど……。ていうか仮にも魔法使いなんだから、魔法で運ぶとかまとめるとかなんとかすればいいのに

「そういえばさあ、いくらでも荷物を詰め込めて、手軽に持ち運べる魔法とかないの? Y次元ポケットみたいな」
「ないよ」
「だよね……あったら使ってるよなあ」
「魔法であんな夢もこんな夢もかなうと思ったら大間違いだよ」








パンプキン(な)パイ



「秋はいろいろおいしいものが増えますね。スイートポテトとかモンブランとかパンプキンパイとか」
「俺はもっぱらメシ系に行っときたいけど。フェルンって甘いもの好きだよな」
「大好きです。移動中には食べられないから、こんな時期に街に留まるとつい食べ過ぎちゃう……。いっぱい食べても太らない魔法とかあるといいんですけど」
「えっ、せっかく食べてんのに栄養がいかなかったらもったいなくない? 俺的にはもっと成長してもらっても」
「……どこ見て言ってるんですか!?」








傷を治すのは



今日も今日とて路銀(と魔法収集)のために討伐依頼をさくっと消化。……のつもりが。シュタルク様の腕を魔獣の爪がすらりと掠めた傷は思いのほか深く、なかなかの毒をはらんでもいた
すぐさま教会に駆け込んだものの。治癒はギリギリ間に合ったが、腐り落ちなかったのが不思議なくらいだという見立てのもと、三日間の絶対安静を言い渡された。それほどの怪我でも三日間で治るというのは私としては驚き……というか引いてしまうくらいなのだけれど、戦士本人としては不服らしい。私が付き添う横でおとなしくベッドに横たわりながらも、目線はうずうずとそこらを泳いでいる。放っておいたら鍛錬を始めかねない

「……退屈ですか」
「退屈っていうか……ええと」
「傷がすぐ治る魔法があるといいんですけど」
「……俺的には、フェルンにつきっきりで看ててもらうほうがいいから、そういうのいらない」
「…………」
「どっちかって言うと、フェルンが暇じゃないかなと思って」
「片手でも本を読んだりはできますから、大丈夫です」
「そう?」
「はい」

私の退屈さ加減を心配するくせに、ずっと私の手を握ったまま離そうとしないその手が、ほんのりと熱を帯びているのは、毒のせいかどうか








声を聞かせて_01



「ザインは曲がりなりにも僧侶だから管轄外かもしれないけどさあ、知ってたら教えて欲しいんだけど」
「なにか誤解があるようだが、俺は女体の神秘への憧れとか娯楽への探究心とか世情への関心がちっとばかし旺盛なだけで、まごうことなき僧侶だ。迷える仔羊の態度によっては答えてやらんこともない」
「思ってること全部、口に出ちゃう魔法とかないよな?」
「おっと反省ナシの方向でいくんだな、まあ俺は親切丁寧な僧侶だから許そう。……なくもないだろうけど、なんで」
「もしそんなの使われたら、俺フェルンに嫌われちまう……ていうか殺されかねない……あんなこととかこんなこととか……」
「やっとつきあいだしたと思ったら、早々に本性出しやがってこのエロガキめ」
「……あっ、フェルンにやられるならそれはそれで本望かも」
「つきあいたてなのにすでに末期じゃねえか」








黄身と君



「あのさ……これってフェルンの好みなの?」
「フリーレン様と私の好みです」

フェルンは、俺の顔と俺が指差した先にある目玉焼きとを交互に見て、即答した

朝食当番はフェルンがメインで担当している。フリーレンは起きないし、俺とザインはそれぞれ一回ずつやったけど、揃いもそろって情緒不安定な仕上がり(※意訳)なので、二回目以降は、鍋をかき混ぜるとか軽い手伝いしか任せてくれなくなったからだ
今朝のメニューは目玉焼きと厚切りベーコンとポテト、パンとスープ。そういえば昨日、市場のオヤジが卵を大量におまけしてくれたと言っていた。皿の中央、白身の真ん中に鎮座するつやつやの黄身をフォークでつつくと、半熟状態のそれがとろりと落ちていく。目玉焼きのお手本のような仕上がりだ。けど

「ごめんフェルン、これはこれでおいしい、すごくおいしい! けど……ホント作ってもらっといて何なんだけど」
「なんですか。前置きはいいですから何かあるなら言ってみてください」
「う、うん……実は俺、目玉焼きって、両面・黄身までガッチガチに焼いたのが好きなんだ……」
「……聞き捨てならないですね。目玉焼きはサニーサイドアップが基本でしょう。とろとろの黄身をパンにつけて食べる多幸感が理解できていないだなんて、お可哀想……」
「えっ。戦士は黙って生卵一気じゃないのかよ、なんかガッカリだな」
「ザインさあ息を吸うように人のことディスるのやめたほうがいいぜ大人なんだから。ていうかザインの好みはどんな感じよ」
「気づいてないのかもしれんがフェルンの物言いも大概だからな? んで、俺は強いて言うなら片面しっかり、ひっくり返して12秒」
「10秒じゃ駄目なのかよめんどくさ……。なあフリーレン、目玉焼きをそれぞれの好みの塩梅で焼ける魔法ってないの?」
「……ひととおりあるけど、もれなくケチャップかかってるけど大丈夫?」
「なんでまたそんな新たな火種を……ていうか、かき氷にはシロップつかないのに、なんで目玉焼きにはケチャップついてくるんだよ……」

塩コショウ派と何もかけない派とソース派、ケチャップ派の新たな論戦が始まる








やさしさに包まれたなら



実際にことに及ぶのは初めてのことだが、この手の知識だけは年相応にある。それに頼って最初こそおっかなびっくり触れていたが、聞くとするとは大違い、早々に我を忘れ貪ってしまっていた。たとえば脚を開かせるだけで頬を染め、指先で弾くだけで甘く濡れた声をもらす。はじめての感覚に戸惑いながらも抗えないでいるその様は、いつもの凛とした彼女とは全然違う。もっと気持ちよくさせたい。はやく繋がってしまいたい。獣のような荒い息を抑える余裕なんかとっくになくなった。細い腰を押さえ、とろとろにとろけた秘所にあてがった陰茎をぐっと押し込むと、それまでの表情とは打って変わって彼女は顔を歪めた。そうだ忘れてた。確かはじめてのとき男はともかく女の子は

「痛い……よな、ごめん。何回かすれば馴染んでくっていうけど……」
「馴染むって……、んっ……!」
「あ! ご、ごめん」

なるべくそこに刺激を与えないよう体の動きをとめたつもりだったが、ふと息をついた瞬間痛みが走ったらしい。咄嗟に瞑った彼女の目元には涙がにじんでいる

「すんなり入る魔法があればいいのにな」
「……っ。あるのかもしれないけど……、あっても、つ、使いません」
「でもさ……」
「痛みも……シュタルク様を感じられて、嬉しいから……」
「…………」
「もっと……もうすこしだけ、やさしくして……」
「……うん、ごめん」

謝らなくていいですから そう笑って彼女はシーツを掴んでいた手を俺の背に回した
たったひとことでむちゃくちゃにしたくなったくらいなのに、優しくしつづける保証なんてできるわけがないそりゃ頑張るけど。……ので、先に謝っておいた








声を聞かせて_02



昼のあいだの仕返しというわけではないだろうけど、夜の彼はいじわるだ。だめと言ってもやめてくれなくて、本当にだめならそう言ってとだけ。涙でぐちゃぐちゃになった顔とか、はしたなく脚を開いた姿とかその他もろもろを見られたくないと訴えたら、灯りは消してくれるようになったけれど、この甘ったるい声だけはどうにもならない

「こういうときの声を抑える魔法があったらなって思います」
「なんで? かわいいのに」
「こんないやらしい声……自分じゃないみたいで、嫌です」
「あっても絶対使わないで。全部聞かせて」

そんなことだけ優しく耳元で囁く彼はやっぱりすごくいじわるだ








戦士ってのは最後まで立っていたやつが(ry



「ずっと勃たせてられる魔法とかないのかな」
「それ……魔法じゃなきゃ駄目ですか?」
「……駄目じゃない……。けど! それは勃つどころかすぐ出ちゃうって! そんな技どこで覚えてきたの!?」
「しゅたるふさまれす」
「そうだよね! ごめん!」








ありのままで



「…………おいしくないものもおいしくなる魔法があったら使いたいです」
「うわあああ飲まなくていいから! “ぺっ”して! “ぺっ”!」