相手が自分を瞳に映す
その瞳に映る自分を通して思うのは、私ではなく他の誰かのこと
しかもその「誰か」は決して他人ではなく、それもまた自分自身という
ひとことでは言い表せない複雑な感情

記憶を失くしたことを責められたことはない
皆、崩れやすい砂糖菓子を扱うかのように接しているのが見て取れる
しかしその裏でどうしても思わされるのは、今の私は私以外の人間にとっては
器以外は、偽りの存在なのだということ



───怒り?
……否

───哀しみ?
……多分、否



嗚呼、頭が混乱する

明確なのは、他でもないあの娘が、私をそんな瞳で見るたびに、過去の私を追うたびに
胸が痛んだということ
胸が痛むのが判り切っているのに、あの娘に逢いたいと思うということ



一度崩れ落ちた記憶も、やはり混乱している



自分を通して他の誰かを追うあの娘の姿に
この、複雑な想いを抱えたことがあるような気がするのだ

それははるか遠い日のこと
けれどなぜかその時の自分はまだ小さくて、早く大きくなりたい───それだけを願っていた
あの娘は私と同じ歳の筈なのに

……これは誰の記憶なのだ?

私の帰る場所は、何処なのだ?





…………帰らなければならないのか?



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