花嫁のブーケの半分を手に、威勢良く啖呵を切る彼女の姿を
楓は、複雑な思いで眺めていた
長さだけでいえば、彼女とのつきあいは花嫁とのそれよりもほんの少し長い
その間、ずっと彼女が好いていた筈の相手はいま
それまで見たこともないような穏やかな顔をして、花嫁のとなりに立っている
彼の持つ、人を寄せつけない態度は、彼女に対しても同様だったから
もともと、熱を上げた彼女が勝手に追いかけていた風ではあったけれど
それが顕著になったのは、花嫁が、季節外れの転入生としてやってきた頃からだ
傍目からみても、彼の目が誰のほうを向いていたのかは明らかだったというのに
他ならぬ彼女が、それに気づいていない筈がない
それでもなお彼女に追うことを課したものは、いったい何だったのだろう
今まで、それなりに恋をした。けれどそれは全て一過性のものだった
なにをさしおいても優先したいほどの相手とそんな関係を構築できなかったからというのもあるけれど
そもそも自分には、ひとりのことをそこまで追いかける情熱はなかった
けれど、ひとりのことをあきらめることもできなかった
──────どっちつかずだ
たとえ思いを遂げることができなかったとしても
あれだけ追いかけることができたなら、本望なのかもしれない
彼よりももっと素敵なひとを見つける そう言いながらニッと笑った彼女も
ふたりを祝う気持ちは同じなのだろう
その潔さが、なぜだかとても眩しいものに思えた
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